マーケターにとって、ターゲットというのは一言では説明ができない存在だ。
ある商品があるとして、CMやHPでは、20代女性を狙った煌びやかな表現でブランドイメージを作っている。
これは、コミュニケーション上でのターゲットのため、コミュニケーションターゲットと呼ぶ。
その商品が、数十年ものロングセラー商品だった場合、CMでは若々しいタレントを起用しているが、実際の売上の多くを占めているのが既婚40代女性とする。
これは、実際に買われている主なターゲットのため、実売ターゲットと呼ぶ。
普通に考えて、購買力を持ち、人口構成比が高い女性40-50代が買う人の比率として、どの商材でも高くなる。
そうすると、コミュニケーションターゲットと実売ターゲットが異なるという問題が発生する。
また、コミュニケーションターゲットの中でも、特に狭めて、ある種ペルソナレベルで狙うのが戦略ターゲットだったりする。
もっと優先度の高いターゲットだ。
また、ブランド担当者が作りやすい、「こんな人に買ってもらいたい」というアイディアルターゲットもある。
20代半ばで、商社勤務数年目。
港区の駅近に住む、バリキャリ層。
周りで話題の商品は大抵知っているし、自分なりのこだわりがある。
フォトジェニックなイベントにも積極的に参加し、SNSでも投稿が活発で、フォロワーも数千人規模。
のような、妄想をベースとしたものだ。
商社でなく、外資コンサルじゃないか、という議論も発生するが、正直どっちでもいい。
もう、このあたりにくると、「で、誰を狙うべきだっけ?」と混乱してくる。
そして、なんやかんやよくわからなくなり、施策レイヤーになると、コミュニケーションターゲットだけが残る。
色々な人が、色々な定義でターゲットを語るため、異なる視点で物が見られ、最後よくわからなくなる。
ターゲットの中で、特に難しいのか、ロイヤルカスタマーの定義についてだ。
ロイヤルカスタマーは、マーケターにとって、定義は様々だろう、
毎日コンビニでポカリを買い続ける、購入頻度の高い層をロイヤル層と呼ぶ人もいる。
購入回数は少ないが、毎月箱買いして、売り上げでは大きな影響を与える層をロイヤル層と呼ぶこともあるだろう。
はたまた、10年前からブランドチェンジをせずに買い続ける層をロイヤル層と呼ぶこともある。
こんなのは定義をした人による。
ここで、大事な視点は、なんとなく継続的に買っていて、購入数、購入金額が高い層を簡単にロイヤル層と定義してはいけないところだ。
ロイヤル層の定義は、基本的にそのブランドにとって忠誠心が高く、安売りや企画品など関係なく、定価でもその商品をずっと買い続けてくれる層のことを言うべきである。
ブランドに対する愛が深い人だ。
人は初めて商品を買うときは本能的、理性的などそれぞれの感覚でモノを買う。
しかし、2回目以降、とくにその商品に不満がなければ、”なんとなく”買い続けることになる。
なんとなく変える理由がないから買っている、という感覚はこわい。
そういう人は、これじゃなければいけないという愛を持った理由で選んでいないため、離脱の可能性が高い。
また、ブランドに対する愛を考えると、そのブランドを愛し使い続けるという「自分視点の人」と、あまりに好きでその商品を「人に薦めるという視点をもつ人」にわかれる。
ここで注意したいのは、ブランドを愛し続けることと、ブランドを推奨することは同一ではないという点だ。
マーケターが陥りやすいのは、ブランドを愛する気持ちが強まれば、その人は他の人に推奨するものだと考えるところがある。
実際に自分が大好きな商品を想像し、その商品をこの2-3か月、誰かにリアルのクチコミで発信したか、またはSNSで投稿したかと問うと、していないと回答する人の方が多いだろう。
つまり、自分がどれだけ好きな商品でも、人に伝えるかどうかは別の話だということだ。
そうなると、ブランドロイヤル層は、自分視点でブランドを愛し使い続け、かつ、その商品を人にも薦める人を定義すべきである。
これは、既存の購買データではみれないし、別途調査をしないとその人を特定することができない。
ブランドロイヤル層は、ブランドを愛しているため、価格やコミュニケーションの訴求内容によらず、ずっと買い続けてくれる。
そのため、ブランド全体の売上の中でも、支える比率は大きなものになる。
ブランドロイヤル層は、周辺の友人に「この商品本当にいいよ!」「買って間違いないよ!」と伝えてくれるため、顧客が顧客を生む循環型のサイクルが回る。
これらロイヤル層は作ろうとして簡単に作れるものではないが、いかにしてロイヤル層化したかは、デプスやグルイン、エスノを通じて知るべきである。
とりあえず、ターゲットを誰にするか、と簡単にターゲットを口にしないで、そのPJの中で必要なターゲットを見極める必要がある。
ターゲットは奥が深いのだ。