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あらゆるビジネスがサブスクリプションになったら

日本でも多くの業種で、サブスクリプション型のサービスを展開している。

 

音楽、映画・ドラマ、漫画、雑誌、ゲーム、バッグ、アクセサリー、洋服、子供服、スーツ、掃除機、コインランドリー、コンタクトレンズ、ワークスペース、カフェ、バー、ラーメン、日本酒、非常食、雑貨、絵本、写真プリント、ドッグフード、花、英会話、医療相談、クラブ、家具…などなど。

 

調べるほど、たくさんの業種が既に参入していることがわかる。

 

海外では、日本で展開されていないようなサービスも出てきている。

月額35万円で乗り放題の飛行機サービスや、サプリメント、薬、室内ランニングマシーン、ホテル、電動歯ブラシ、水道家事工事、香水、化粧品、幼児向けスポーツ教室、高級ジュエリーもサブスクリプション化されている。

 

大手と差別化をはかりたい中小企業やベンチャーが自社の商品をサブスクリプションサービスで展開したり、複数のブランドを扱う仲介系企業が色々な選択肢をちょっとずつ楽しめるという形で展開している。

 

個人的には、利用期間・機会が限定的で元が取れない「子ども服や玩具」「ブランドモノのバッグ」はどんどんサービスを拡大してほしい。

 

とくに、家にちびっ子のいる我が家としては、子ども向け商品はあっという間にサイズアウトしたり、玩具も対象年齢を超えてしまってすぐに使えなくなるので、いつも買うのに躊躇する。

 

親として良い物を買ってあげたいのと、どうせすぐ使えなくなるからという葛藤は、サブスクリプションサービスによって購入ハードルが一気に下がる。

 

また、購入の失敗ができないような高額の「家電」や「自動車」、日々の利用頻度の高い「英会話」などのスキルアップ系サービスや「エンタメ」は向いている。

 

 

色々な企業が参入しているサブスクリプション市場に、TOYOTAが11/1、車の自動車定額乗り換えサービス、サブスクリプションモデルの「KINTO」を発表

 

KINTOでは、税金や保険、車のメンテナンスなどすべての費用がコミコミで提供される。

 

BMWやベンツも海外ではサブスクリプションサービスの展開を発表していたり、国内ではNORELなどのサービスも出ているが、国内のメーカーとしては初めての取り組み。

 

とくに、国内ナンバーワンの自動車メーカーTOYOTAがやることがすごい

 

メーカーは自社の商品を売るために、定額制になかなか切り替えられない。

 

Adobeのように一気にサブスクリプション型に舵を切って成功する企業もあるが、販路をきちんと押さえている企業こそビジネスモデルの変革には躊躇する。

 

今の顧客が逃げてしまうと考えるか、一括回収から継続回収にすることでよりビジネス拡大に繋げられると捉えるか。

 

 

ただ、生活者視点では、仮にこのような大手企業がサブスクリプションサービスに続々と参入すれば、生活者としての利便性は今よりも格段にあがるのは間違いない。

 

例えば、トイレタリー企業のP&Gがサブスクリプションサービスを展開したと妄想すると。

 

月額1000円で、洗剤、シャンプー、ボディソープの詰め合せがセットで毎月配送される。

 

大家族用の月額3000円のコースや、化粧品SKⅡに特化した月額7900円のビューティーコースも登場すれば、P&Gとして日用品や化粧品を自社商品で継続的に囲うことができる。

 

生活者は、ドラッグストアで物を選択する必要が無くなり、”いつものあれ”が定期的に届けられて、買い忘れがなくなる。

 

多くの化粧品ブランドを保有する資生堂もそれに対抗し、「大人女子」「アラサーアンチエイジング」などのターゲット軸での展開や、「つや肌」「乾燥肌」など肌悩み軸でサブスクリプションサービスの展開も考えられる。

 

ブランド毎の縦割りの販売から、生活者の嗜好に合わせてスキンケアからメイクアップまでブランド横断したサブスクリプションも可能になる。

 

入口をビューティーアドバイザーで、継続利用にサブスクリプションみたいな、リアルとデジタルを横断したサービス展開も資生堂なら十分可能ではないか。

 

仮に、飲料のサントリーが参入した場合、月額5000円で、モルツやプレモルのケースが届き、さらにサントリー系列の飲食店ではビールやドリンクが一杯無償になるということもあれば、世のサラリーマンとしてはこれほど嬉しい物はない。

 

とくに、ビールについては、キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーなど、企業によって味の嗜好が全然違う。

 

キレの良いビールが好きな人はアサヒを飲み続けるし、コクのあるビールが好きな人はサッポロを買い続ける。

 

メーカー縛りになっても多くのビール好きは好んで入会するだろう。

 

そういう意味では嗜好品の煙草においてもJTが同様のサービスをすれば、継続的に購入する層もいるはず。

 

飲食においてもニーズはありそうだ。

 

日清食品やハウス食品、森永乳業によって献立や料理セット、スイーツセットが定額で届けられたり、マクドナルドでは月額10000円で一日1セット引き換えられるみたいなものがあると、「メニューを考える」負担や、「お店を探す」面倒くささが解消されるかもしれない。

 

6-7万円する高額掃除機のダイソンも最近月額数千円で掃除機のサブスクリプションサービスに参入しているが、同じように、家電でパナソニックが参入したら、これまでパナソニックを使ってこなかった新しい顧客が一気に動きそうだ。

 

最新のDVDプレイヤーDIGAが月額960円で利用可だったり、8K対応テレビが月額1980円でレンタルできるということが実現すれば、引っ越しの多い一人暮らし世帯はとても助かるし、高額の買い物に躊躇する層も使ってみてこれならいいかもと、レンタル品をお買い上げすることも有るのではないか。

 

自分もカメラにハマっているが、カメラなんて本体もレンズも高額でなかなか揃えることができない。

 

一つ買ったとしても、本体1に対して、レンズはn個なので、物理的にレンズの使用頻度は限定的になる。

 

そのレンズに対して十数万円~数十万円もかけるのは気がひける。

 

でも写真を撮ることは好きなので、色々なレンズを試してみたい。

 

遠方にお出かけのできる若いうちから色々なカメラを試したいというニーズがあり、NIKONなど大手カメラメーカーがサブスクリプション型サービスに参入し、月額3000円、5000円、7000円という料金別にレンズを借りられるサービスがあると、もっともっとカメラ愛好家が増えそうだ。

 

高額商品で言えば、楽器もそうで、ヤマハがピアノやギター、バイオリンなど子供向け~大人向けの定額利用を始めたり、ニトリが家具のレンタルを行うというのも面白そうだ。

 

 

サブスクリプションサービスは、今後も市場拡大することは間違いない。

 

プレイヤーが増えており、生活者としては選択肢が増えているというのもあるが、そもそも世帯収入が年々下がっている日本において、一発で大きな買い物をするよりも、少額で継続的に購入する方が生活者にとっては利便性が高い。

 

2002年から純貯金額(貯蓄額-負債額)が全世代で減少しているというデータがあるように、貯金がし辛い世の中で、お金をためずに始められるサービスがあれば多くの人が流れ込むのは明白だ。

 

今後サブスクリプションサービスが本格的に生活者に浸透していった場合、使わないけど契約し続ける層が増えるという(嬉しい)課題も出てくるだろうし、なんとなくで商品を買っている惰性利用者(ジプシーユーザー)が特定のブランドをサブスクリプションを通じて使い続けロイヤル化が進むということも起きうる。

 

大手メーカーが提供する「特定メーカー専門型」と、複数メーカーを横断した「総合メーカー型」のサービスも出てくると想像される。

 

また、自動車と美容院とお菓子みたいな、全然異なるカテゴリを横断した、「カテゴリ横断型」のプレイヤーも出てくる可能性もある。

 

Amazonみたいな既に複数の商品を抑えている企業が強そうだが。

 

ECから始まり、リアルの店舗でもサブスクリプション型のサービスが増え、生活者は何かを買うために貯金するという行動が減り、購入から定額契約するという行動にシフトする。

 

この市場の拡大によって、貯金する人が今以上に減りそうだ。

 

サブスクリプションに躊躇している企業からすると、全ラインナップから入るのではなく、特定のブランドや商品からスモールスタートし、生活者の反応を見ながら徐々にラインナップを拡張するのが良い。

 

そして、サブスクリプションビジネスから得られる示唆を、旧来型のビジネスである一括売り切りビジネスに還元する。

 

どういう層がトライアルになり得るとか、どこで離脱しやすいというデータをもとに、新商品の金額設定やサービス設計に活用していくのが良いだろう。

メーカーの人間は、「仮に自社がサブスクリプションビジネスに切り替わったら」ということを本気で考えてみるのも必要だ。

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千田 智治
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