Drink

おじさんがトクホ茶を飲む意味

ついにコカ・コーラからもトクホのコーラが出た。

 

CMを見ても、明るく楽しいコカ・コーラはそのままに「こう見えて」という動画タイトルの通り、この楽しさを提供しつつ、トクホで身体にも良い、ということを伝えたいのだろう。

 

トクホでなくても美味しそうだし、爽快感、楽しさがグッと伝わる。

コカ・コーラらしく、良くできたクリエーティブだ。

 

ちょうどこのタイミングで3月23日発売の週刊新潮で「トクホの大嘘」というかなり刺激的な特集がされている。

担当者だったらかなり青ざめる記事だ。

 

からだすこやか茶W、十六茶W、特茶などが商品名と共にやり玉にあがっている。

ざっくり言うと「トクホなんて嘘っぱちで、全然痩せねーよ」という記事だ。

 

トクホ茶は、生活者からすると「どれも痩せるお茶」という認識だと思うが、実際、それぞれ機能が異なる。

 

大きく分けると4つある。

分解、燃焼、吸収抑制、脂肪代謝促進だ。

 

トクホは国への申請にたくさんの研究結果と許可に長い時間を要する。

数年という申請期間を要するため、中小企業が簡単に入り込める領域ではない。

 

そして、申請したヘルスクレームも、申請の通りしかコミュニケーションに利用することができず、申請の段階でコミュニケーション活用を視野に入れないといけない。

あとから、魅力的な言葉を付け足して伝えることができない厳しい世界だったりする。

 

トクホ茶は、今は特茶がぶっちぎりの売上一位だ。

 

サントリーの商品力、コミュニケーション能力は素晴らしい。

そもそもトクホ茶のパイオニアは花王のヘルシア緑茶だった。

 

サウナでおじさんがお腹をひっこめて、年齢に抗うCMは今でも印象に残っている。

まわりのおじさんには負けたくない、男同志でも老いていく身体を見られるのは恥ずかしい。

だらしない自分に見られなくないのだ。

 

その後、「トクホはおいしい時代に」というサントリーの挑戦的なコミュニケーションを皮切りに、値段でのお得感や、おいしいをベースとした特茶シリーズによる攻撃で、いつしかヘルシアは太ったおじさんが飲む飲料に押しやられてしまった。

 

かなり厳しく激しい戦いがトクホ茶では繰り広げられている。

 

まぁ、このあたりの飲用者分析はインテージの購買データで分析すれば色々クラスタが分けられると思うが、自身も長年のヘルシア緑茶ファンからすると、いくつか飲み続ける理由がある。

 

全員がそうだとは思わないが、少なくともヘビー飲用者は、トクホ茶だけ飲んでも痩せるなんて思っていない。

こんな飲料で痩せたらダイエット食品なんてだれも買わない。

 

 

でも、毎日トクホ茶を飲み続けるのだ。

 

一本200円もする高価で小さな緑茶を飲み続ける。

 

その理由に、「拠りどころ」というものがある。

 

こんな高いお茶を飲んでいるのに、毎日脂まみれの食事でいいのか、と自分を責めることがある。

飲めばなんとかなる、という「なかったこと」を期待して飲む人ももちろん中にはいるだろう。

 

黒烏龍茶のCMなんてまさにそんなターゲットを狙ったCMそのものだ。

 

ただ、自分は違う。

 

いつまでも健康的でいたい。

他の人と比べて太っているとも思っていない。

実際に太っていない。

逆に痩せている方だったりもする。

 

でも、年々太っていく自分が許せないし、その領域に行きたくない。

自身への戒めというか、「拠りどころ」としてトクホ茶を飲み続ける。

 

こんな高い飲料を飲んでて元を取り戻せるのか?

こんな飲料で痩せるわけないけど、飲み続けている分、食べまくって、飲みまくって、積み上げた投資を壊す気か?と自分を責める。

それがトクホ茶を飲むモチベーションだ。

 

すべては「拠りどころ」を自身で作るためだ。

 

そして、それが続くとあのトクホ茶の苦さが癖になる。

自販機で売り切れているときは、別のカテキン緑茶を探して買ってしまうほどだ。

ある意味末期だ。

そんなの自分でもわかっている。

 

苦さが効くなんて全然思っていない。

実際、飲み続けている人も、なんとなく効果を感じていると答える人も、本音は投資に対する効果を後から意味づけしているのではないか。

 

ここまで来ると、トクホ茶はお守りに近い存在なのかもしれない。

 

飲むことで自分を戒める。

 

飲むことで自身の欲を思いとどめる。

 

飲めばすぐに痩せるとは思わないが、飲むことが自分の中の他の太る要因を食いとどめる存在であることを理解している。

 

その言い訳、その「拠りどころ」にトクホ茶がなっている。

 

人は弱い。

自分から頼れる存在を作らないと、痩せる!という気持ちを保てないのだ。

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千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

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