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ファンマーケティングが企業になかなか浸透し辛い理由

既存顧客を重視するファンマーケティングってなかなか企業に浸透しない

この問題は結構昔からある問題で、現場の人間が簡単に解決できるものではない。

 

自身はファンを重視したマーケティングがとても大切で、絶対導入すべきというスタンスなのだが、実際企業に導入しようとすると色々ハードルがあり、「わかるんだけど。。」という返答と共にうやむやに消えていってしまうことが何度かあった。

 

そもそも、ファンマーケティングとは、その名の通り自社商品を愛してくれる”ファン”を重視したマーケティングのことだ。

 

6-7年前に、ソーシャルメディアを活用したマーケティングがブームになった時、このファンマーケティングが注目され、顧客との対話が大事という話の延長で、多くの企業がmixiやTwitterなどを用いたソーシャルメディア運用を始めた。

 

傾聴する、対話する、アクティブコミュニケーションをする、という形で、ファンとの距離を縮める活動が盛んになった。

その後、ソーシャルメディアが当たり前に企業内で運用されるようになり落ち着いたが、ここ1-2年またファンマーケティングが改めて注目されている感じがする。

 

もともとは、ソーシャルメディアのコンサルティングで勢いのあったトライバルメディアハウス、アジャイルネットワーク、QON(旧エイベック研究所)などが、コミュニティによるファンとの対話やMROC、アンバサダーマーケティングなど、新しい取り組みを企業にどんどん提案していった。

 

そして今年、さとなおさんもファンベースベースという書籍を出し、多くの反響があるのを見ていると、業界がそちらに向かっているのだと感じている。

 

欲しい物がない若者を中心にモノが売れず苦しむ企業。

 

毎年たくさんのマーケティング費用を投下し、企業間で戦いあっているが、若者は車に乗らなくなり、格安スマホに乗り換え、服はファストファッションですませ、外食もしない、ビールも飲まない、恋人がいない、結婚をしない、という攻略の難しい層が徐々に増えてきた。

 

そんな中で、ファンを重視するという大きな方向性はとても理解できるのだ。

新規獲得コストは商品の数倍かかってしまうことが多いが、既存維持コストは商品の数分の一に抑えることができる。

 

もちろんダイレクト系企業であれば、LTVをあげるべく、購買頻度や購買量を上げたり、クロスセルで顧客単価をあげるように細かなマーケティングができるし、進んでいる企業はマーケティングオートメーションを導入し、見込み顧客のフラグ化やメルマガやSNSでの自動配信でコミュニケーションを円滑に進めているところもある。

 

だが、多くの企業はそこまでたどり着いていない

 

LTVをゴリゴリあげるようなシステムや体制、予算も整っていないし、いまだ自社ECの導入に踏み切れていない企業も多い。

 

リアルのお店での売上が大半を占める企業、とくにメーカーは、顧客との関係を繋ぎとめる手段が限定的で、再購買させるなどのマーケティングが難しかったりする。

 

流通にはデータが貯まるが、企業(メーカー)にはデータが貯まらない。

いつまでたっても自社の顧客がわかっていなくて、毎回キャンペーンの度に新規顧客を狙い続けることになる。

 

そうなると、社内のマーケティング予算も基本的に新規顧客を獲得するための予算と捉えられがちだ。

 

新しいタレントを起用する、人が集まりそうな場所でイベントをする、有名なインフルエンサーにつぶやいてもらう、面白い動画を作るなど、新しいお客さんを捕まえるためのコミュニケーション設計となる。

 

多くの売上を既存顧客に支えられていることはみんな頭で理解しつつも、狙うのは新規顧客なのだ。

 

その時に、ファンマーケティングの大切さを説くと、「たしかにその通り!」と最初は言われるが、目の前の売上を達成するための予算を既存顧客に投入するという話になると、「既存顧客は何もしなくても買ってくれるので不要だ」とか言い出す人もでてきたり、「既存顧客を狙う術がない」「既存顧客を狙っても目標売上が達成できない」など批判的な声が出てきたりする。

 

「大事なのはわかっているんだけど。。」という返答と共に、徐々にトーンダウンして導入まで至らない。

 

これは、そもそもマーケティング予算の使い道の話になるのと、ファンとの付き合い・ファンの育成という長期的な取り組みになってしまうので、およそブランドマネージャー以上の権限のある人でしか意思決定ができなくなる

 

一現場では決められない。

 

役員と握り、そこから現場に落とすくらいの進め方でないと、導入までたどり着くことが難しい。

 

新規獲得と既存顧客の維持・育成のための予算をきちんと割り、すぐには結果がでてこないが、後から着実に売り上げとなって帰ってくることを信じ、ファンマーケティングに投資し続ける覚悟がいるのだ。

 

そのハードルを越えることができれば、顧客の獲得コストを抑えながら売り上げを立てることができ、そのファンが次の顧客を呼ぶ良い循環が作れるようになる。

 

また、ファンもブランドのことを好きなだけ、扱い方を間違えると恐ろしいことになる。

NIKEのFacebookページを見ていると、ブランドのことを好きな分だけファンは愛を憎しみに変える

 

 

名作エア マックス95をネットで販売したところ、一瞬で売り切れるということが起こった。

転売屋が発売後一気に買占め、すぐに転売を始めたことに怒り、その怒りは転売屋ではなくブランドに対して向けられた

 

 

「ふざけんな」「仕掛けているのはNIKEじゃねーのか」「NIKEは売れればいいんでしょ」など、辛いコメントが一気に投稿されるようになった。

好きだからこそ、裏切られた行動に対して、その反動が大きい。

 

ファンマーケティングを始める大変さもあるが、続ける大変さもあるということだな。

 

 

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

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