先月参加したIntageのアジアのミレニアル世代についてのセミナーが面白かったので、内容をかいつまんで備忘録的にまとめる。
中国でビジネスをしたことがある人は「バーリンホウ」「ジョウリンホウ」という単語を聞いたことがあると思うが、バーリンホウ(80后)とは1980年代生まれを、ジョウリンホウ(90后)は1990年代生まれを意味する。
中国では1990年代生まれの”新世代”が、これまでの世代と意識や価値観、ライフスタイルが異なり注目を浴びている。
中国のGDPは、1970年以降緩やかに増加傾向にあったが、1990年代以降急激に伸びており、バーリンホウ(80后)は、そのゆるやかな経済成長と共に育った世代であり、ジョウリンホウ(90后)は経済成長を遂げた社会で育つデジタルネイティブだ。
ジョウリンホウ(90后)はバーリンホウ(80后)に比べ、生まれた時から満たされた生活環境が整っており、頑張らなくても良い生活ができるのが特徴。
また、一人っ子政策で親や祖父母から甘やかされて育っている面もある。
この「頑張らなくても良い生活ができる」というのは中国特有の傾向でもある。
日本では学生の4割が一人暮らしをしているが、中国では学生の6割が寮に入る。
大体が全寮制だ。
また、新社会人において、日本では3割が一人暮らしをするのに対し、中国は一人暮らしの割合が1割で、基本的には結婚するまで親と住むのが普通だ。
更に、中国では住宅購入時に、半数以上が親からの支援を受けており、住む場所にお金をかけずに一生を過ごせるため、自分の趣味に多くのお金を費やすことができる。
ジョウリンホウ(90后)のインサイトを掘っていくと、「プレッシャーなく今を楽しみたい」という傾向があることがわかる。
仕事で沢山の時間を取られたくない、自分で事業を起こしたい、現状を変えることもチャレンジしたいという傾向がバーリンホウ(80后)よりも高く、決まったレールを歩くのを嫌う。
そもそも生まれた時から満たされた環境におり、さらにデジタルが普及しており、ほしい情報やモノがいつでも簡単に手に入るため、選べる選択肢が多いことを理解している。
そのため、一つのことをコツコツやるのはスマートではなく、とりあえずやってみて、ダメならまた違うことをやればいい、やってみてから考えるという、一見何も考えていない場当たり的な性格にも見える。
また、情報やモノが溢れ、生活水準も高まる中で、他人とは同じにはなりたくないという気持ちが強く、自分らしさや自分独自の存在価値を示せるかが大事な視点となる。
ジョウリンホウ(90后)は、周りのみんなが良い物を持っているため、自分のアイデンティティを如何に出せるかに注力する。
ルイ・ヴィトンよりもSupremeなど、個性やスタイルを感じるブランドの方を好む。
自分の価値を表すものにはお金を惜しまず、高級品だけでなく自分のスタイルに合ったものは迷わず購入する。
ジョウリンホウ(90后)の実際の生声で、「買ったけど後悔することは度々ある。最近、小さくて可愛いカバンに惹かれて衝動買いしたけど、スマートフォンしか入らなかった。でもそれでいい。」という意見も紹介されていたのもあるが、刹那的に飛びつき、自分の直感を信じ行動する部分が、非常に右脳的・直感的であり、何か小難しい説明のする商品の方が逆に好まれないのではと思ってしまう。
買い物行動だけでなく、仕事面でも生活の安定よりも、理想の実現や自分の価値実現、自分が好きなことを重視するなど、やはり自分らしさを求める。
SNSでは自分らしさを発信するために、そこでしか得られないような体験型のイベントやコンテンツを好む。
最近は、ジムで自分を鍛えることがジョウリンホウ(90后)でのトレンドのようで、そうしたライフスタイルを送る自分がカッコいい、ということなのかもしれない。
また、何を買っても同じならと、洋服も自分で裁縫するなどDIYファッションも人気だ。
ジョウリンホウ(90后)が使う流行語に「顔値」という言葉がある。
これは顔偏差値の略語で、人の顔だけでなく物も含めた、見た目の良し悪しの程度を示す言葉だ。
見た目こそ全て、見た目こそ命という価値観は、KOLが職業としても人気なのもあるが、やはり見た目が良ければ人気者になれるし、注目もされるという考えから来ている。
これらの傾向は、大都市(上海などの一級都市)に住み、収入が高めの層で顕著に表れており、今後この傾向が二級都市以降にも広がっていくと思われる。
広告会社として、プロモーション設計時にヒントとなることも紹介されていた。
キーワードとしては「バックグラウンドやストーリーを組み込む重要性」だ。
人に話したくなるストーリーを作れるか、商品が生まれたコンセプトや、コラボレーションしたバックグラウンド、著名人が好んで使っているなど、人に話したくなる要素がジョウリンホウ(90后)の強い共感を生む。
中国では家飲みがまだそこまで広がっておらず、カラオケで飲むという風習がある中、低アルコール飲料のRIOは、カラオケでも目立つように暗闇で光るボトルを販売し人気となった。
また、コラボ先もぶっ飛んでおり、中国の虫除け剤のメーカーとコラボし、蚊取り線香味のカクテルを出して大きな話題を呼ぶなど、大胆なクロスオーバーは人に話したくなるストーリー性があるようだ。
Peppa Pigというキャラクターが中国で人気となった際、GUCCIやNIKEなど多くのブランドがコラボレーションして企画品を出すことも、独自性や個性を感じるようで、それも人に話したくなるコミュニケーションツールになる。
江小白という中国酒では、商品の特徴をあえて前面に出さず、パッケージを工夫。
パッケージは48種類も有り、ジョウリンホウ(90后)が共感する「過ぎたことは忘れて、今をもっと楽しもう」「未熟な男は成熟を装い、成熟した男は未熟を装う」等のポエムが個性を表しており、一人一人に向けたストーリーを作っているとのこと。
また、メディア接触として、彼らはSNSに依存するデジタルネイティブであり、デジタル内でバズが絶えず挙がっていることがトレンド感のあるブランドだと認識する。
中国でデジタルインフラとなっているWeiboやWeChatはどこか自分たち向けではないと思っているところもあり、クチコミ&ECアプリであり今最も勢いがある小紅書(Red Book)に移りつつある。
小紅書(Red Book)は、マイクロインフルエンサーの集合体であり、そこで物が売れ、一晩で多くの売上を稼ぐことができるなど、投稿する側と閲覧する側の両方に魅力が詰まっているようだ。
あとは、日本でも今きているショートムービーアプリTik Tok(中国ではDouyin)も人気だ。
バーリンホウ(80后)は、成功のために努力や我慢をするのに対し、ジョウリンホウ(90后)は、プレッシャーなく今を楽しみたいという楽天的な特徴を元に、中国でのコミュニケーションを設計しないといけない。