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TVCMの効果測定プレーヤーの増加と、進むデジタル広告の配信整備

ここ数年で、TVCMの効果測定が可能な企業が増えてきた。

誰にどれくらい配信ができているかを見える化したり、さらにデジタルで広告配信まで繋がっているものも。

 

資生堂のようにイケイケでTVCM予算はそのままで、デジタル上乗せと言う企業もあったり、ロレアルのように数年後までにデジタル比率100%化に向けて改革を進めている企業もあるが、今、日本の多くの企業がTVCMの予算を削減し、デジタルにシフトさせている。

 

TVCMの効果測定でメジャーなのはビデオリサーチだが、2000世帯のTV視聴計測をしているスイッチメディアラボのSMART、エリア別にTVCMの放送状況を把握できるMadison、最近データ連携が活発な電通のSTADIAなど、TV計測のソリューションが増えてきた。

 

また、打ち手にダイレクトに繋げられるのが、東芝レグザのデータを活用したデジタルインテリジェンスのCMARC。

リアルタイムに視聴データを取り込み、アクチュアルのリーチやフリークエンシーを計測でき、そこからデジタルで広告配信が可能だ。

 

徐々にこれらTVCMとデジタルを絡めたソリューションを活用している企業が増えている。

そのままTVCMからダイレクトに繋げられる連結型でなくても、どの人にどれだけ配信できたかの効果把握ができていれば、エリアや性年代・嗜好をもとに別途デジタルメディアのプランを組み配信ができるので、TVCMで届かない層へのリーチ補完として使われている。

 

例えば、あるドラマ枠にTVCMを出稿したが、○○エリアのリーチ状況が良くないと視聴データからわかった場合、別途デジタルでそのエリア×ターゲットデモグラをかけ合わせてリーチを上積みさせる。

 

TVCMとデジタルの重複排除の正確さや、デジタル広告配信までのスピードを重視する場合は、ダイレクト型を選んだ方が良い。

サイバーエージェントのように、事前にアンケート調査等からTV接触の低関与者であるローテレ層にフラグを立てておいて、そこに配信するという割り切りも有る。

 

あと、大事なのが、TVとデジタルをかけ合わせた時の見るべき指標だ。

 

デジタルインテリジェンスが提唱しているターゲットインプレッション数という考え方もある。

 

「リーチ」を最大化するという目的に対して、GRPをインプレッション数に変換し、TVとデジタルで最大インプレッションとなるように「ターゲットインプレッション数」をプランニングする。

 

GRPとimps(view)の方程式は、企業によっては算出し、保有していたりもするが、まだそこまでたどり着いていない企業の方が多い。

 

個人的には「リーチ」よりも「認知」での方程式を作るべきかと。

 

情報過多の中、届けただけでは記憶に残らないことも多いし、クリエーティブに左右される。

リーチマックスの概念よりも認知マックスとなるプランニングをTVとデジタルで設計すべきだ。

リーチの先の認知をゴールに定め、同じ認知を得るために、どれくらいのGRPが必要なのか、どれくらいのimps(view)が必要なのかを作る。

 

例えば、1GRP=1000imps(view)のように。

商材や、時期、新商品なのか既存商品なのか、デジタルがPCなのかスマホなのかで膨大なパターンをつくらないといけないけど。

 

このあたりのメディアプランニングの領域はかなりディープな方に企業やソリューションが進んでいるのだが、正直多くの企業はそういったことも理解せず、「とりあえずTVCM2割カットね」「○○千万円はデジタルに割くように」とエイヤでTVCMを減額しているのが、もったいない。

 

TVCMとデジタルの最適な組み合わせ方は企業によってそれぞれ研究しないといけない。

 

また、デジタルのみで売上増加した場合、その成功事例が報告がし辛いという声もある。

上層部からしたら「お!TVCMなくても売れるじゃん。じゃあ来年の予算もTVCMカットしよう」となるため、大声で「デジタルで物が売れた」と言いにくいという意見も聞く。

やはり現場担当者は目の前の数字を背負っているため、単純にTVCMをカットされることに大きく抵抗する。

 

更に、ここ最近、YouTubeが計測タグをグローバルで見直し、国内のプレーヤーが全滅したというのも大きな事件だ。

YouTubeに接触した人がTVCMにも接触していたのか、その人は誰なのか、何回接触したのかといったことが、例えばインテージでは計測できていたが、これからはニールセンやカンターなどグローバル調査会社でしかそういった効果測定ができなくなり、多くの企業が混乱している。

 

何かが見えるようになったら、別の何かが見えなくなったと。

 

アメリカの経営者ジョン・ワナメーカーが「広告費の半分が金の無駄使いに終わっていることはわかっている。わからないのはどっちの半分がむだなのかだ」という名言があるが、TVの見える化が進んだと思ったら、今度はデジタルの見えなくなる化が進む。

 

いつまでもはっきり見えないのが広告領域なのかもしれない。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

三児のパパ

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