資生堂を筆頭に、美容業界が大きなうねりを見せている。
化粧品を買うことではなく、体験を買うことに業界が大きくシフトしている。
モノからコトへと色々な業種で言われているが、ついに美容業界にもその波が押し寄せてきている。
2年前に資生堂は、オープンイノベーションを加速する組織として資生堂ベンチャーズを設立。
自前主義では市場の変化に対応が遅れてしまうのと、従来のM&Aプロセスではアプローチしきれないイノベーションも市場では起きているため、ベンチャーを中心に外部と積極的に提携しオープンイノベーションを進めるコーポレートベンチャーキャピタルを作った。
指先から疲労度を算出することで健康状態に適したサプリを自動配合し、粉末で注ぐヘルスサーバーを開発するドリコスへの投資。
その後、気分やストレスレベルに応じて3000種類以上の香りをカスタマイズして放出するアロマディフューザーBliScentを開発。
スマートフォンアプリでユーザーの肌色を簡単に計測し、肌色に合ったカスタムメイドのファンデーションをECで購入できるビジネスを展開しているMATCHCoの買収。
更に、WEB上でバーチャルにメイクアップする技術、メイクアップアドバイス、カラーマッチング、肌色判定などの技術を持つGiaranも買収。
スマホアプリで肌測定を行いその時のコンディションに合わせて美容液と乳液を抽出し、生活者に提供するスキンケアシステムOptuneを発表し、18年春からテスト販売を行う予定だ。
また昨月、資生堂がアメリカのベンチャーOlivo Laboratoriesを買収。
Olivo Laboratoriesは、人工皮膚によって肌の凹凸を補正させる技術をもっており、しわやたるみを隠すことができる。
昨今話題のスマートスピーカーAmazon Alexaへの美容アドバイススキルの提供も積極的に行うなど、怒涛の快進撃を続けている。
個人の美容状況をより精度高く計測し、きれいになるための手段もテクノロジーの進化で広がってきている。
パーソナライゼーションの波はより加速。
ただ、この大きなうねりは、現場で作れるようなうねりではない。
海外の企業を買収し、自社に吸収するための組織づくりや、走りながら進化していくアジャイル式の研究開発など、上層部からきちんとトップダウンで動かさないとこの大きな動きは間違いなくできない。
テレビCMをやめてスマホを中心にコミュニケーションをせよといった小さなデジタルシフトではないのだ。
経営者がいかにこの市場の変化に危機感を持つことができるか。
そして社として本気で取り組む姿勢を社内外に見せることができるか。
外部から来たCXOか、ビューティーテックに明るいコンサルを入れないとこの動きはまずできないだろう。
この領域は始まったばかりで何が正解か誰もわからない。
ビューティーテックにおける投資の回収がいつどこでどれくらいの大きさでできるかもわからないが、走りながらこの市場のうねりの中で戦うしかない。
広告会社に求められるのも、コミュニケーションよりも更に上のレイヤーのこれらのサービス提供、コンサルティング業務になりつつある。