久しぶりに週刊ジョージアのアプリを起動したらエラーが出てしまい、ブラウザ経由でサイトに行ってみたら17年2月にサービスを終了していた。(気づくのが遅いのもあるが)
これでまた一つ、成功事例と呼ばれていたコンテンツマーケティングがうまくいかず、終了したことを意味していた。
16年12月にコカ・コーラパークが閉鎖されたのも記憶に新しい。
飲料は100数十円でどこでも売られており、わざわざ検索してまで購入されるものではないため、継続的にブランドとの繋がりを持ち、ブランド想起を上げるためにコンテンツマーケティングに取り組む理由はとてもよく理解できる。
ここ数年の急激なスマホシフトにより、コカ・コーラパークでは、PC利用者が13年は236万人から16年には100万人へとたった3年で大きく下がった。
それによってCoke ONアプリへのリソースシフトが行われたという企業の事情もある。
ただ、多くの企業がコカ・コーラと同じように自社メディアを保有し、定期的にコンテンツを制作し掲載し続けているものの、うまくいかず苦労している。
まず、オウンドメディアへのサイトアクセスやアクティブ度合といった関与度が高いほどポイントが貯まるという「ポイント系サイト」という仕立てにしてしまうと、どうしてもポイント目当てのゲッターが集まり、企業側が本当にやりたいロイヤルカスタマーの育成に繋がりづらい。
WEBサイトでは、ポイント系の情報がまとめられやすく、無料で商品を手に入れたい人が手軽に情報を手に入れてしまう。
そして、そういった人たちがたまってしまうことで、本当の意味でブランドを愛してやまない顧客が集まりづらい環境がある。
勿論、ユーザーの中には真のブランドラバーが一定数存在するがボリュームが少なく、関与が低くどれだけ投資してもロイヤルカスタマーにひきあがらないポイントゲッターが多くを占めてしまう。
そして企業は、ロイヤルカスタマーになりにくい顧客へ多くの資源を延々投資することになり、いつか上層部から「このサービス、なんのためにやってんの?」「これでどんな効果が得られたの?」と効果を聞かれるようになり「全然売り上げに繋がってないし、逆に何も生んでいない」「この投資に見合うリターンが得られていない」と結論づけられ、閉鎖に追いやられてしまう。
これらのコンテンツマーケティングの大きな狙いである「継続的にブランドとの繋がりを持ち、ブランド想起を上げる」ためには、「コンテンツと商品への関与が結びつく無理のない設計」がうまくなされているかが大切となる。
日本ハムのBBQ GO!はうまくいっているコンテンツマーケティングの一例だ。
BBQスポットからお肉の焼き方、珍しいレシピやBBQあるあるなど、全国のBBQを楽しむ情報が集約されたメディアとなっている。
日本ハムを推したコンテンツにはなっておらず、お肉を食べられることが促進されれば、結果的にお肉の消費が増加し、日本ハムも儲かるという構図だろう。
Googleが行っているように、無料でサービスを提供しネットユーザーが増えれば結果的に自社が儲かるという視点と同じだ。
ストッパが提供する@トイレというアプリも同じくよくできたコンテンツマーケティングの一例だ。
全国にあるトイレをマップ化して表示して、急にトイレが必要なときに重宝するアプリとなっている。
BBQ GO!も@トイレもそうだが、「特定のニーズを強く保有する顧客に向けたスモールメディアである」という特徴がある。
毎年屋外で焼いてワイワイ飲んでほろ酔いしたいBBQ大好き層は一定数いる。
また、プレゼンの前、講演の前など大事な時に限ってお腹をくだす層も一定数いる。
そんな人の気持ちに寄り添ったコンテンツマーケティングは、その人たちに愛用され、いつまでも使われるものになる。
5月の宣伝会議でこんな対談記事が載っていた。
話題になったその先で、より深く商品自体にも興味を持ってもらえるようにと、常に意識しています。カップヌードルパスタスタイルのキャンペーンは、そのための仕掛けを施した一例です。商品にイタリア人が認めなかったパスタというキャッチフレーズを与えたんです。この言葉を受け取った人は、認める?それとも認めない?と自らに選択することになる。言葉が広がると同時に、商品に関与してもらうことができるのです。
商品自体に興味を持ってもらえる仕掛けをつくることで、想定の3倍の速度で売れたようだ。
10分どん兵衛も、商品中身のことが伝わるように工夫しました。【おわび】日清食品は10分どん兵衛のことを知りませんでした。という謝罪だけが話題になっても、日清が謝罪したwwwってなるだけで意味がない。そこで、商品への関心に繋げていくためには、謝罪に付帯するコンテンツが重要だろうと考えました。そこでつくったのが、10分どん兵衛の発案者であるマキタスポーツさんとどん兵衛の担当者の対談記事。二人があれこれと語り合った後、最後にどん兵衛を美味しそうに食べるシーンも見せました。
オウンドメディアに関わらず、キャンペーンにおいても、興味を引くコンテンツとそれを自然な形で商品と繋ぐことが大切と言っている。
コンテンツと商品を無理のない自然な形で繋ぐ設計が難しい場合は、「濃い人だけが参加できるようなコミュニティをリアルの場やデジタル上で作り、その人たちを中心にファンの輪が広がる設計から始める」のが良い。
ヤッホーブルーイングが行うよなよなエールの超宴だったり、スノーピークの雪峰祭りといった、非常に濃いブランドラバーが集まるイベントを開催することや、トヨタの86 SOCIETYのように、トヨタのスポーツカーを愛してやまない人に向けたドライブを究極に楽しめるプラットフォームを用意するなどして、企業は濃いブランドラバーとの会話を密に行っている。
コンテンツマーケティングは、うまく設計できればユーザーの気持ちを継続的に把握することができ、キャンペーンへの活用や、コンテンツ開発や商品開発などにも活きていく。
また、商品やサービスが均質化していく成熟社会で、顧客が顧客を呼び寄せる、いわば顧客の企業代行発信化によって、少ない投資で多くの利益をもたらすという期待もある。
コンテンツマーケティングはゆっくりじわじわ後から効果が得られるものなので、成果はあとからついてくると信じて、最初の設計をきちんと吟味し、その後は長い目でみて育てていくことが大事だ。