昨年末に販売されたAmazonオリジナルの電子レンジAmazon Basics Microwaveは、賛否分かれる評価が投稿されているが狙いは面白い。
59.99ドルという安い金額で販売された電子レンジだが、機能はAmazonらしいな、という印象。
Alexaを使って音声で電子レンジAmazon Basics Microwaveを動かす。
「Alexa、ポップコーンを温めて」という形で音声で伝えると、電子レンジが温め方をネットで確認し最適な温め方をする。
今は、ポップコーン(食材)だけだが、サブスクリプションで電子レンジからAmazonに食材が自動注文される。
これまでの電子レンジは「だいたい1分くらいかな」とか「お肉の解凍モードで3分」とか人間が判断し、電子レンジに温め方を指示していた。
それが、Amazon Basics Microwaveでは、何をどうしたいのか音声で伝えれば、Alexa経由でAmazonが最適な温め方を実行してくれる。
人間の判断を、きちんとそのモノ一つひとつに合わせたFit Well思考で機械が置き換えている。
電子レンジは恐らくAmazon的にも実験的な位置づけで、どんどんイノベーティブな商品を世に出すスピード重視で実行していると思うが、この考え方がうまく成功すれば他の商品カテゴリにも浸透すると思われる。
例えば、洗濯機。
仮に、Amazonオリジナルの洗濯機が販売されたとすると、電子レンジと同じような考え方で、Amazonの洗濯機内の設置された洗剤、柔軟剤、オシャレ着用の中性洗剤、漂白剤などが不足したら、サブスクリプションでAmazonに自動注文されるようになる。
これが今、Amazonが進めているプライベートブランドをレコメンドされたら、企業は多くのTVCMをやっていようと、プラットフォームを押さえているAmazonの選択関連商品が自動発注されることにもつながりかねない。
例えば、飲料。
飲料でも同じように、Amazonオリジナルのジューサーに対して「Alexa、今日はお肌によくて甘い飲み物を作って」と声をかければ、事前にセットされたカプセルから最適な飲料が提供される。
そうなると、今人気のネスカフェ ドルチェグストがAmazonに食われることになる。
例えば、化粧品。
化粧品でも同じように、Amazonオリジナルの化粧水ジェネレーターに対して「Alexa、今日の天候や私の睡眠に合わせた化粧水をお願い」と声をかければ、肌に合った最適な化粧水が提供される。
こんどは、資生堂のOptuneがAmazonに食われることも想像できる。
別にAlexaがなくても成り立つような、シャンプーやコンディショナー、ボディソープの設置されたAmazonオリジナルの自動ディスペンサーがあるとすると、不足しそうなタイミングでAmazonから自動発注されることも考えられる。
このように、ハードを家庭内に侵入させることで、ソフト側(商品)がAmazon側に握られるというビジネスモデルは非常に恐ろしい。
Amazonのうまいところは、人間がこれまで属人的に判断してきたことを、機械が最適な量や強さでコントロールし、モノではなく便利な生活体験を提供していることにある。
これまでAmazonが蓄積してきたモノを識別する力、理解する力、学び続ける力の終結した技術力の賜物だ。
とはいえ、一歩引いてみると、別にAmazonだけでなく、ハードを侵入させソフトで稼ぐビジネスモデルは他の企業でもトライできるモデルだったりする。
ソフト(商品)を売っている企業が、ハードまで進出するか、ハードを売っている企業と組んでサブスク的な売り方をトライするなど、変革をどんどんしていかないとガリバーのAmazonに食われてしまう。