昨年、日経新聞では毎日のようにAIの記事が掲載されているが、広告会社もその流れに乗って色々とAI対応を進めている。
大きくは5つの目的に分類されるのではないか。
具体的に電通の例をあげて。
『発想支援』
広告会社の強みのアイデア発想をAIが支援するもので、コピーやバナー、CMのアイデア出しに活用されている。
電通の「AICO」は5秒で100種類のコピーを生成するAI。
新聞広告のクリエーティブコンテストのファイナリスト入りするくらい精度はあがっているようで、企画立案時のコピーのイメージ作りで活用する。
また、「ATALU」は、テレビCMを企画し、効果測定まで行うAI。
20年分のCMデータベースが学習されており、短時間で条件に合ったCMコンテを100本作成することができる。
過去の事例を元に、AIは最適なコンテを出すので、クリエーターはそれよりも振り切ったホームラン狙いの作品に集中できる。
「ADVANCED CREATIVE MAKER」は、2000枚のバナーを生成し良いものを精選するAI。
大量のバナーを生成した後、クリック率の高いと予測される20案を抽出する。
大量のバナーのアイデアをAIに支援してもらい、人間はその中からクライアントに合うクリエーティブ、規定や薬事に合うものを選別することに集中できる。
『トレンド予測』
発想支援に近いが、これからヒットするトレンドをAIを使って予測するもの。
電通の「TREND SENSOR」は、SNSやテレビのメタデータをもとに、ヒット前の予兆をキャッチし、トレンドを考慮した企画を後押しする。
SNSでじわじわ話題になり、テレビ露出でより話題が広がった、うんこ漢字ドリルやハンドスピナー、ブルゾンちえみも、トレンド予測の波長に合っているようだ。
『購入支援』
購入や集客までの効果を見据えたメディアバイイングをAIを使って行うもの。
電通の「SHAREST_RT」は、過去の視聴率やタレントのプロファイル、トレンドや気象情報などを学習させ、AIで放送前1週間のテレビ視聴率を予測する。
また、昨年10月にローンチされて改良が進められているが、広告効果の最大化を目的に今も多くのデータを学習させている。
『対話支援』
SNSの返答を自動化するなど、コールセンター・SNS監視の代理としてAIを活用するもの。
いわゆるチャットボット。
電通の「Hiku-Hana」は、質疑応答型の顧客対応を自動化、高度化する日本語AIの自動対話サービス。
顧客とのやりとりを元にどんどん学習し、より最適な返答を即座に返すことができる。
『単純業務の効率化』
AIを入れるということはどれも業務効率化なんだけど、とくに、これまで単純入力してきたような業務をAIが肩代わりするもの。
電通では、月末に深夜まで行っていた営業の受注登録を自動化させ、600工程を削減している。
これによって、月1万6000時間の時間短縮にも成功している。
これら5つの対策は、人間が属人的にやってきた作業をAIに肩代わりさせ、その上で、人間が他の作業に集中できるというものだ。
これらAIソリューションは今後も増えていくし、精度も上がっていくが、AIによって広告会社の力の入れどころが変わってくる。
当たり前だが、広告会社もクライアントも媒体社もAI導入は進んでおり、競合他社とAIバトルが勃発する。
人間に求められるのは、それを超える設計や、AIではできない(と思われる)セレンディピティなコミュニケーション設計だったりする。
また、よりマーケティングの本質をAIが解決することも今後色々な企業がチャレンジするだろう。
どんなものを作ればヒットするのか、どの材料をどこで調達し、それをどの時期にどのようなコミュニケーションで展開すればより確度が高いか、というマーケティング戦略をAIが設計する。
身近なAIと言えば、スマートスピーカーだが、昨年アメリカではスマートスピーカーの所有率は18%を超えた。
イノベーター理論でいうと、イノベーターが2.5%、アーリーアダプターが13.5%なので、いまアメリカではアーリーマジョリティ―層までスマートスピーカーが浸透している。
スマートスピーカーは初期市場のキャズムを既に超えており、AIが当たり前の世の中にもなっているということだ。
AIが当たり前になる世の中を想定して、広告会社はそれを考慮した仕事を生み出さないといけない。
この領域も、毎日勉強をしてない奴はどんどん乗り遅れていくわな。
本当、大変な時代になった。