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広告主への出向を経験して

某広告主に二年ほど出向させていただき、3か月前に帰任した。

 

広告主側に席を設け、社員証を持ち、名刺を作り、その会社の人間として働く二年間。

 

もちろん、広告主として働くので、実家の広告会社側の見慣れたメンバーにオリエンもするし、提案のフィードバックも行う。

 

きついフィードバックもすることになるので、時には敵に思われただろうし、お互いやりにくさを感じたのもあったと思うが、本当に有難い経験だった。

 

外から見た広告主と、中から見た広告主って、やっぱり全然違うわけで、中を知っていればお互いの意思疎通のミスも減るし、なにより広告会社側のこれまでの無駄な稼働が大きく削減出来たり、その分、もっと提案精度を上げる時間に費やすことができるんじゃないかと思う。

 

出向の学びを早く整理をしたかったのだが、帰任後、想像通り超忙しくて、「あ~広告会社の忙しさって、やっぱり全然次元が違うわ」と心の中で思ったのも事実。

 

あらゆる打ち合わせで「すみません、全然間に合ってません。今日は骨子だけ共有します。。」と言いながらの綱渡りの毎日で「この感じ、出向前とまったく変わってないわw 懐かしい。それにしても打ち合わせばっかりで、全然考える時間ねーし!つーか、打ち合わせはいいんだけど、この企画書はいったいいつ書けばいいんだ?書くのはワシか?」みたいな毎日で。

 

時間作って少しずつまとめていかないとな。

 

二年ちょっと出向していると、もう浦島太郎状態で、会社の仕組みも大きく変わるってるし、働き方改革も一巡してめっちゃいい会社になってたりするのだが、広告主側に目を向けると、うちの会社だけじゃないけど、出向常駐がめちゃめちゃ活発になっていた。

 

広告会社側が様々な広告主側に出向常駐し、張り付きながら仕事するのがかなり進んでいることに気づく。

 

でもこの流れは必然的で、いまのクライアントビジネスを支えていくにはこの形にたどり着くんだよな。

 

             

 

帰任して、実家の広告会社側に一番フィードバックしたかったことは、広告主と広告会社の「時間軸のズレ」が年々広がっているということだ。

 

感覚的なことなのかもしれないけど、でも、確実にその差が広がっている

 

 

よく、年々マーケティングスピードが上がっているとかニュースとかで聞くけど、広告主側にいるとその激しさをヒシヒシと感じる。

 

広告会社にいたら、全然その激しさがわからない(わからないこと自体がやばいんだけど)。

 

 

例えば、1年前にめちゃめちゃ売れた競合商品があったとして、その時には、社内でかなり話題になって「どうして売れたんだ!」「あの手法を真似て対抗しろ!」みたいなことが起こるのだが、1年後、その競合商品がまったくもって売れなくなっていることが度々ある。

 

あっという間に生活者に飽きられる。

 

そして、成功の仕組みがあっとういう間に古くなってしまい、新しい仕組みを新たにつくっていかないとモノが売れない時代になってきている。

 

そのマーケティングスピードが毎年どんどん加速している。

 

 

そうなると、広告主側での「議論の更新」が一層激しくなっていく、ということが起こる。

 

上から横から下から至る所から、あーでもないこーでもないとブランド担当者は意見を言われるし、そういった市場の早い変化に対応しようと毎日のように議論が進む。

 

基本的に今プランニングしているものは半年後にローンチされるキャンペーンだったりするので、半年あると、今の成功体験が使えなくなってしまうことが度々ある。

 

例えば、いまインスタグラマー施策がうまくいっていたとしても、半年後には同じような施策で飽和化して効果が半減している可能性もある。

 

例えば、いまシークエンス型の短尺動画が効果あっても、半年後は様々な企業が真似をして、効果が出づらくなってしまうこともあり得る。

 

そのため、ブランド担当者は社内で議論を更新し続け、どんどん考えがバージョンアップされていく。

 

それについては全然問題ない。

 

 

ただ、問題は、広告主側のオリエンと、広告会社のプレゼンのズレが発生してしまうということだ。

 

広告主側がオリエンをする。

 

二週間後に広告会社がプレゼンをする。

 

この二週間の間に、広告主側はバージョンアップしているので、プレゼンしたところにはもういなくなっていて、もっと前を走っていることに気づく。

 

 

提案がミートしないので再度時間をもらって練り直し、広告会社は再提案をする。

 

するとまた広告主は前に行っている

 

いつまでたっても「時間軸のズレ」が埋まらない。

 

 

そして、このズレが年々広がっていることに気づく。

 

たった二年の出向生活だったけど、そのズレが年々確実に広がっていると感じたので、帰任後その話を同僚としていると、他のいろいろな広告主でも同じようなことが起きていることが分かった。

 

 

今は多くの企業で、広告会社による出向常駐をむかえる傾向になっており、中で伴走してもらうことで素早くビジネスに対応する手段をとるようになってきているのもそうした背景がありそうだ。

 

 

で、大事なところは、この状況で今までと同じような広告会社の提案をしていてはいけないということ。

 

練りこみ型のチーム体制から、即座に対応できるアジャイル型のチーム体制に変えるべき。

 

また、練りこんだキレイな提案書から、考え方を合意することを主眼としたフォーマットやデザインは問わない提案書に変えるべき。

 

この話をしたとき「広告主側にいたから汚い提案書でも許されただけで、広告会社にもどったらそれでは許されない」とか言ってた人いたけど、その時点で自分が勝手にハードル上げて苦しみに行ってるだけで、勝手に首しまってろと。

 

そういう人は、いつまでもキレイな提案書にこだわって無駄な時間使って、いつまでもミートしない提案をしてればいい。

 

大切なのはちゃんとした売れるマーケティング戦略を立てることであって、考えることにしっかりと時間を費やし、さらにバージョンアップし続ける広告主側に適応できる俊敏性をもつことだ。

 

少人数。

 

そして高速に。

 

ザ・ご提案から、ともに進めるブレスト提案へ。

 

変化の激しい市場に広告主が変わっているのだから、広告会社もやり方を変えないといけないんだよな。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

三児のパパ

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