数か月に一度のペースで、女性向けの広告が炎上している。
今度は、ちふれが炎上。
女性ってこうでないとねという、女性あるべき論に捉えられる広告表現は、ここ最近必ず炎上している。
たとえそんな意図で作っていなくても、受け手によって、そう受け取られる表現であれば、絶対に変えるべきだ。
ちふれの場合、Twitter上で、『いつの間にか「女磨き」をおろそかにしてませんか?時短美容を活用すれば、忙しい日常と女磨きはちゃんと両立できるんです』と発信したことが発端だ。
サイトでは、女磨きレベル診断が受け皿となっており、女磨きしないと!そのためにちふれ使わないと!と誘導するしくみだ。
最初に反応したのが、ちふれユーザー。
いやいや、ちふれってそんなキャラじゃないでしょ!
女磨き商品として買ってないのに、いきなりどうした!
あなたは、質実剛健な商品でしょ!
と、これまでのイメージが大きく変わった表現をしだしたことで大きな反応が返ってきた。
真面目で優等生なキャラがいきなり、君たち女磨きちゃんとしてる?とか言い出し、社会人デビューしだしたことで、周りにいた友達もおいおいどうした、貴方の魅力はそこじゃないでしょ、目を覚まそうよ、と驚いている状況だ。
ブルゾンちえみを起用して、発言にもう少しマイルド感与えたら反応は違っていたと思うが。
そのあと、ネットニュースで「ちふれが炎上」と広がり、ちふれのユーザーでない人まで参戦。
ちふれが女磨きを助長している!最低な企業だ!
という形でさらに広がり、最後、企業側が不適切な広告表現をしましたと謝罪し鎮火する騒ぎに。
ちふれに限ったことでないがこのたぐいの炎上はここ最近本当によく見る。
資生堂インテグレートも同じように炎上した過去がある。
頑張ってる女性を応援するCMを作ったが、生活者の反応は「しんどい生き方を助長している!」「出演する上司の発言はセクハラである!」と受け取られ、炎上してしまった。
ムーニーのオムツのCMも同じく炎上した。
共働きが増えている中、一生懸命仕事に育児に頑張るママ。
そんな頑張ってるママを応援するCMだったが、生活者にはそのようには届かず、「ムーニーがワンオペ育児を助長している!」「ママに育児を押し付けることを良しとする最低な企業だ!」と一気に炎上した。
東急電鉄のマナー広告も、頑張る女性を応援、というものではないが、女性あるべき論に捉えられる広告という意味では同じだ。
綺麗に座る女性が素敵、とマナー啓蒙するために、電車内広告で訴求したが「女性だけなぜ指摘するのだ!」「おっさんの方がよっぽどマナー悪いだろ!ふざけんな!」とこれまた炎上してしまった。
これら、広告を作る側からすると十分起こりうる事例に思える。
多くの企業は広告を作る上で沢山の調査をしたり、深く深くインサイトを掘って、そのインサイトを自社商品で支援したいと思う。
弱者である○○な女性を応援してるよ。
○○な女性のいつもそばにいるのが●●ブランドです。
というメッセージは女性向けのブランドで戦略を考えるとき、あるべきブランド論として、よく案としてあがるものだ。
「女性はこうあるべきだ!だからこうしなさい!」とステレオタイプなメッセージを、そのまま送るような馬鹿な企業はない。
頑張る女性を応援するブランドになりたい、というポジショニング論を考えると、ちふれが実施した表現をしがちで、受け手には女性あるべき論に捉えられてしまう。
これらの炎上からの学びは、三つだ。
一つが、女性追い詰め表現を避けること。
働く女性が増え、男性よりもバリバリ稼ぐ女性もたくさん増えている。
男性だって家事育児平等にすべきで、男性も女性も同じ目線でお互いをみなくてはならない。
女性が下である、という考えは今の時代あってはならない。
そんな中、女性って綺麗であるべき、おしとやかであるべき、という女性を追い詰めるような表現は行わず、受け手にそうとらえられないような色々な方向から表現をチェックすべきだ。
そして二つ目が、女性商品の表現をおっさんだけで作ることを避けること。
広告会社でありがちな、おっさんばっかりでチームを組むということが往々にしてある。
広告会社は女性採用を積極的に行っているものの、まだまだ男性の比率は高い。
役員だって女性の比率よりも、男性の比率の方が高いのはどの広告会社も一緒だ。
そうなると、チームメンバーが男性比率が異様に高くなり、男性だけで女性商品を考えることもある。
自身が過去びっくりしたのが、若年女性が集まる某ファッションコレクションのミーティングで、営業~マーケ、プロモーションまで約10人が男性だったことがある。
超若手だった自分でも「いやいや、全員おっさんだけで、若い女性のインサイトを考えるとか無理だろ!一人でもいいから入れろよ!」と思ったことがある。
他にも、過去、女性向け商品の競合コンペで、三社で戦ったとき、他店は全員女性でチームを固めてきたことがある。
結果、クライアント側は、「女性の気持ちがわかるのは、やっぱり女性じゃないとね」ということで、チーム編成で他店の勝利が即決したことがある。
もちろん、女性商品は女性だけで考えるべきではないし、男性視点、女性視点両方から精査すべきなので、バランスの良いチーム作りが大事だが、女性がいないおっさんだけで考えると、大事な視点が損なわれ、炎上に繋がる恐れがある。
そして、三つ目が、何でも謝る企業姿勢をやめるということだ。
クライアント側は、生活者に嫌われることを異様に嫌う。
クレーム数がn=1だろうが、クレームが入ると会社内はざわつく。
この表現をしたのは誰だ?広告会社はどこだ!
お客様からこんな意見が来ているので、今すぐ放送を中止せよ。
と上からのお達しがくることも。
そして、何か月も練りに練って作り、時間をかけて制作した広告が、ものの数回の放送でお蔵入りになる。
本当にそこまでの対応をしなければならないのか、と思う事例も少なくない。
実際のユーザーは別になにも感じてなくて、買っていない人たちが炎上に加担しているだけ、という事例もある。
お客様のことを第一に考えることは大事だが、企業としての凛とした姿勢がないと、ぐにゃぐにゃした何が言いたいかわからない弱い企業にみえてしまう。
すくなくとも、ここ最近のステレオタイプに女性はこうあるべきだと決めつけた考え方に少しでも取られる表現は今後もやめるべきである。