自社も他店も、基本的にどの競合プレゼンでも、DMPを活用した統合マーケティングしましょう文脈を目にする。
例え、テレビCMのクリエーティブ競合であっても、全体視点という意図でデータを貯めましょう、誰が反応したか見ましょう、その上で精緻なターゲティングに活かしましょう、という内容でDMP導入の提案もひっついてくる。
DMP提案も、定量調査で効果測定しましょうという文脈に近く、結構当たり前になっているのではないか。
特にプライベートDMPの視点で書くと、DMPの導入は、ケイパビリティ的な意味もあるし、他店の提案に入っていた時の減点を回避するために入れるという意味もあり、外せないのはわかる。
だが、この領域、プラットフォーム開発や、データ購入、そしてDMPで一番大事なデータ連携が進んでいるかというと、まだまだ上手くいっていない広告会社が殆どだ。
広告会社の中で博報堂がデータ連携など一歩抜きん出ているのはあるが、何処までそれを使いこなせているかを考えると少し怪しかったりする。
DMPの活用のされ方は主に2つ。
ターゲットの明確化とデジタル配信の精緻化だ。
ターゲットの明確化は、競合提案時と、キャンペーン前後に行われやすい。
最近多いのが、競合提案時だ。
広告会社がすでに保有するDMPデータを用いてペルソナ化する作業を行い、今の顧客を明らかにする。
0次プランニングという言葉が使われることもある。
メディアの接触、購買行動、意識価値観を組み合わせて、『誰が興味あるのか』を明らかにしていく。
ということが主な目的だが、何処まできっちりデータを繋げてペルソナを作れているのか結構怪しい。
実際は競合時に数十万円の予算で定量調査を回しペルソナ化したり、広告会社が保有する過去の既存定量調査データベースからペルソナを作る。
大半のペルソナ像を定量調査で作り、薄く重なったメディア接触データや購買データ、意識価値観をペルソナの要素にまぶしていく。
DMPで全部やりきった感を出す提案書はどの広告会社にも多いが、実際はこれまでの旧来型の定量調査をベースにしたやり方が大半だ。
これら、多種多様のデータを扱うデータサイエンティストは、データがないゼロの状態よりも、少しでもあった方が良い、という理論で信頼できないサンプル数のデータであっても使っていく。
サンプル数がかなり少ない(信頼できるかというと結構怪しいくらいの)色々なデータをツギハギしながらペルソナを作っていく。
まるで色々な情報をペタペタ貼って1つの像を作っていく情報ミノムシのようなやり方でペルソナを作るのだ。
完全にDMPのみでペルソナ作成はまだまだ程遠い状況なのが実情だったりする。
そして、DMPのもう1つの活用のされ方の、デジタル配信の精緻化も商材やブランドの状況によっては結構不毛な作業に終わりがちだ。
DMPのデータ分析って、当たり前だが結構手間がかかる。
使えるデータ、使えないデータのクレンジング作業、そこから必要なデータを仮説とともに抽出し、分析する。
頑張って出したデータから、ターゲティングの精度を上げるために、他に興味関心のありそうなカテゴリを見つけ、配信していく。
この一連の作業、かなり手間がかかるし、時間もかかる。
ここで、立ち止まって思うことがある。
バナーを複数案、大量に作り、GDNやYDNでブンブン回した方が、早いし楽だし効率良くないか?と。
キャンペーン予算の視点で見ると、デジタルに割く金額はまだまだ少ない。
なんだかんだマスに予算の多くをかけ、デジタルはその一部という予算感の企業が大半ではないか。
そうなると、デジタル配信の精緻化でクリック率が0.何%上がっても、得られる効果は、全体のうちとても小さなインパクトだったりする。
これだけ汗水垂らして頑張っても、大きなリターンが得られない。
なので、沢山クリエーティブ作って、ブンブン回して、反応が良いところに予算を寄せれば良いと感じるようになる。
精緻化を進める先に何があるのか、人やお金や時間をもっと有益に使う手段はあるのではないかと。
もちろん、ダイレクトごりごりのクライアントは、顧客の刈り取りが進み、潜在層を発掘しないとビジネスが成り立たないという悩みもあるので、DMPは有益なソリューションになり得るだろう。
クライアントのおかれた状況や、むいている商材を無視して、とりあえずDMPを入れて、とりあえずデータを貯めれば、これまで見えなかった何かが出てくる、と期待するのはやめて欲しい。
提案に入れないと弱く見えるし、入れたら入れたでうまく活用できない恐れもある。
現場が直面するDMP問題。
広告会社が作り出す魔法のコトバが自分たちの首を絞めているような気がする。