数年前から、総合代理店はテレビは強いがネットに弱いと言われ続け、総合代理店も色々と対策を講じてきた。
デジタル専門会社を立ち上げたり、デジタルメディアとの協業、デジタル有識者によるコンサルティング契約、デジタル人材枠での新卒や中途採用、社内教育やその周辺の環境強化、海外での積極的なデジタルエージェンシーの買収などなど。
数年前と比べると全体的にスキルアップが進んでいる。
それは間違いないのだが、デジタルの出稿額では、総合代理店はネット専業にまだまだ大きく差をつけられているのが実情だ。
総合代理店とネット専業の違いをあげればきりがないが、現場プランナーの視点で、ここが課題だと思うところ5つ考えてみた。
どの総合代理店、どのデジタル専業かを特定した話ではなく、あくまで大きな傾向として。
自分で書いて自分で回す個の力
ネット専業の人は、営業であり、プランナーであり、メディアの運用もできるデジタルオールラウンダーが多い。
若くからどんどん最前列に出され数字に責任を持たされるネット専業は成長スピードも速い。
やっぱり、デジタル領域は自分でプランニングして、回してみないと絶対に力がつかない。
デジタルの○○試験を全社的に受験するみたいな代理店も散見されるが、そういうことじゃないと思う。
あたまでっかちにデジタルの○○試験に合格したとして、それがどれだけ今現場に直接役に立っているのか。
やっぱり現場で今必要とするスキルをその場で習得することが、スキルアップの近道かと強く思う。
現場で決める決済力
ネット専業の人は総合代理店よりも現場の決裁権が強いように感じる。
ある案件で、総合代理店とネット専業が同じ提案をしていたとき、ネット専業の営業はその場で値引きをして案件を勝ち取ったことがある。
総額予算の中、一定の利益率を確保できれば、メディアをその場で値引いたり、サービスでつけたりと現場判断で動くことがネット専業の強みだとその時感じた。
決済力があるとクライアントとの交渉スピードも早いし、お互いのストレスも少ない。
勿論、超若手が現場であり得ない判断をしてしまうこともあるだろうが、失敗して成長すると考えると全然良いのではないか。
同じ企画書を使い倒す横転力
A社、B社、C社それぞれに提案したネット専業の企画書を見たことがあるが、びっくりするくらい同じだったことがある。
つまり、汎用的な企画書はガンガン横に展開し、効率化をはかることが進んでいる。
売れる企画書は全社的に共有し、ガンガン使い倒す。
総合代理店にも特定の部署で開発されたフレームワークもある程度出回るが、まだクライアントに合わせたフルカスタム企画書も少なくない。
割と職人芸的なプランナーが多いためか、他の人に見せず、営業にもPDFでしか企画書を出さない人もいたりして、効率面で見ると「?」な働き方をしている人もいる。
機密事項はもちろん漏えいしない範囲で、ナレッジシェアは会社としてどんどん進めるべきだ。
スペシャリストとジェネラリストの使い分け
ネット専業は、経営視点で選択と集中をしっかりやっている感がある。
広告予算が中規模以下のクライアントの場合、ジェネラリストの担当者が1人つく。
特別スキルが高いわけではないが、ある程度全部回せる人をつけて効率よく稼ぐ。
一方、大規模な予算を持つクライアントの場合、スペシャリストで構成したチームをアサインさせる。
優秀なプランナーがアサインされているので、難易度の高い案件や規模の大きな案件もしっかりコミットして対応できる。
これは総合代理店が特にできていないところではないか。
分業で人数も多い総合代理店はどのクライアントにもおよそ結構な人数をアサインする。
営業一人でクライアントに通って回すとか殆どみたことがない。
成果主義で力があればどんどん出世する
若手へのチャンスが豊富なのはネット専業ではよく聞くだろう。
30代になるまでに部長や局長になるなど、仕事ができればどんどん出世する。
総合代理店の給与は世の中の平均年収からするとよい方だ。
でも、ネット専業の子と度々飲んでたとき、彼から聞いていたのは自分よりも全然稼いでいるという話。
売上が1位だった、利益額が1位だったなど、ネット専業は会社内で結果を出せば、インセンティブがつき、給与やボーナスに反映される。
地位も給与もあがり、やる気がある若手がどんどん活躍する循環ができている。
とはいえ、ネット専業がすべてがいいとは言わない。
担当者が数年で変わっていくとか、デジタル以外はまだ弱い部分があるなどネット専業もまだまだ課題はある。
マスの扱いを守る総合代理店 vs マスの予算を食いに来る攻めのネット専業という構図から、マスとデジタルを高い水準で設計できる総合代理店という構図にもっていかないといけないな。