クライアントに向き合っていると、つい競合に勝つためには、という視点でプランニングしがちだ。
初動で行う3C分析も、顧客と自社と競合の関係を見て、自社をどのようなポジションを取るべきか、競合に勝てるUSPは何か、という視点で設計していく。
ただ、競合に勝つ、という視点では真の意味で、クライアントのためになっていない。
自社店舗を保有していない企業であれば、流通がとても大事なチャネルになる。
良い関係を築き、自社商品の棚を一つでも多く、そして、良い場所を確保したい。
一方で、流通がその企業に求めるのは、競合に勝つことではなく、「市場の創造」だ。
他社の商品が売れなくなって、その企業の商品が売れても、流通からすると全くうれしくない。
売れる金額が変わらないからだ。
そうではなく、新しい市場を作り、それを新たに買いに来るお客さんを増やしたい。
既存のお客さんには、いまよりもっとお金を使ってほしい。
これが流通の望むことだ。
市場の創造=良い提案ができれば、流通は企業に対する信頼を増し、より良い関係を構築することができる。
そういう意味で言うと、ここ最近の市場創造はやはりボタニストになる。
シャンプーに続き、ボディーソープ、柔軟剤、そして最近は屋外広告でも目にする、オーラルケアだ。
ボタニカルという市場を作ったことで、その市場に共感する層が、それに付随する商品を購入するようになった。
新しい市場を作ったボタニストは値段を新たに設計することができるため、通常の商品よりも高い値段で設定することができた。
今月発売されたボタニカルオーラルケアセットは、普通のドラッグストアで売っているようなオーラルケア商品と比べると2376円とかなり高い。
それでも、流通が望むのはこういうことなのだろう。
また、新カテゴリを作らなくても、「既存市場を伸ばす」というアプローチもあり得る。
ジョンソンアンドジョンソンが行っている、赤ちゃんの快適な睡眠啓蒙が良い事例だろう。
赤ちゃんの健康や成長には睡眠はとても重要な要素になる。
そのため、グローバル単位で、赤ちゃんの睡眠の大切さや、どのような睡眠が望ましいかということを丁寧に伝え続けている。
BEDTIME Baby Sleepという赤ちゃんの睡眠を計測するアプリを提供するのも、その活動の一つだ。
この活動が秀逸なのは、きちんとジョンソンアンドジョンソンの商品に紐づいた計算がされていることにある。
赤ちゃんが心地よい睡眠を得るためには、気持ちの良いシャンプーが必要。
そして、肌を清潔に保ち、かつ肌に優しいボディソープが必要。
また、お風呂上がりのボディケアなども必要となる。
つまり、快適な睡眠の啓蒙は、ジョンソンアンドジョンソンの商品の購入に密接に繋がっているのだ。
肌に優しいです!とか、植物由来の成分です!とか、そういう機能を前面に出すのではなく、赤ちゃんの睡眠って大事だから、そのための活動をしようよ!と啓蒙。
グローバルではジョンソンアンドジョンソンのベビーケアのシェアは非常に高く、大半の店頭で商品が置かれている。
流通側できちんと網をはれていることも、コミュニケーションの全体設計の中に秀逸に組み込まれている。
市場を拡大することで、より商品が売れるという好事例だろう。
新たに市場を作る。
また、既存の商品でも、市場を拡大する設計を行う。
これが流通に喜ばれる提案であり、その関係を構築できる企業にも良い提案になるのだ。