桶谷 功氏 著書のインサイトを読んだ。
ストプラ向けの書籍。
消費者のインサイト=ホンネを見つけ、思わず動く心のホット・ボタンを押すためのテクニックがまとめられている。
普段の仕事を通じて、当たり前のようにやっていることも、体系だって整理してもらえると助かる。
- インサイトを知る上で、人の分類にとらわれず、消費者が持っている気持ちを深く掘り下げる。そして、核となるホット・ボタンは何かを一つに絞り込むことを目標とする。
- 使えるインサイトか、使えないインサイトかを見極める方法として、一つ目は、新しい発見かどうか。二つ目は、自分の担当しているブランドとの間に整合性があるかどうか。三つ目は、アクション(活動)に繋がるかどうか。四つ目は、そのインサイトから発想が広がるくらい刺激的かどうか。
- インサイトの候補がいくつも上がった場合は、最も使えるキー・インサイトに絞り込む。一つの目的に一つのインサイトが対応するようにする。これらのインサイトには一貫性があり、一つのストーリーに統合されるようにする。
- インサイトをもとにしてマーケティング戦略のキモをシャープにする。問題点を列挙するのではなく、それら全てを包括するような核心は何かを言い当てる。
- インサイトが消費者の行動を変える、心のホット・ボタンだとしたら、そのボタンを押すのがプロポジション(消費者を口説く、ブランドや製品からの提案)である。
前段は抽象的な説明が多いが、シンプルに、製品についてユーザーとノンユーザーでの認識の違いや、ユーザーがどういう気持ちからこの製品に興味を持ち、魅力を持ったか掘り下げる。
逆に、ノンユーザーが、魅力に感じないのは何故か、どういう気持ちが障壁になっているかを探る。
その製品やサービスとは何か。何をもたらす製品・サービスなのかを一言に絞り込んでいくことが普段のプランニングで必用。
後半は、事例が多くイメージしやすい。
- シリアルを買わない人の心の奥底に潜んでいた心理的なバリアは、「シリアルを朝食に出すのは、手抜きしている悪いお母さん」というイメージがあった。そのため、シリアルにひと手間加えるメニュー提案や、栄養バランスのよさをアピールする活動などが効果的。
- あるスキー・リゾートは、バブル崩壊後、不景気が深刻になるとともに経営が厳しくなった。そこで、毎日がクリスマス、海外のような本格的スキー・リゾートでロマンチックに過ごす、完璧なクリスマス体験を打ち出すことで見事に成功を収めた。ここでのキー・インサイトは、白銀のリゾートには、やっぱりクリスマスに行きたい。でも一日しかないから、なかなか予約が取れない、となる。日本人にとってクリスマスは宗教的な行事というより、あくまで一つのイベントであり、本当のクリスマスの日であるかは大きな問題ではない。
- バスの運行状況を示す電光掲示板が設置されてから、イメージがよくなり、乗客数もわずかながら増えた。人間は、何の目途も無く待っている時間がイヤなのだ。正確にあと何分で来るかはたいした問題ではなく、目途さえつければ、人はイライラしないで待つことができる。
- ハーゲンダッツの抹茶味を訴求するとき、濃いグリーンという色がキーであることがわかった。消費者は色鮮やかな濃いグリーンに、ハーゲンダッツの品質やおいしさを最も感じていた。そこで生まれたCMが、アイスクリームの表面を、ひたすらスクープしていく広告で、全編がグリーン一色であった。
- 男性は、ひげ剃りにどこかしら男らしさを感じている。それは、男だけがする行為だから。それをシックでは、K1ファイターのマイクベルナルドで端的に表現。消費者はカミソリのブランドには関心がなく、ブランド名を覚える気がない。それを逆手に取り、「キレてなーい」を使ってブランディングを行った。また、消費者は、カミソリのようにさほど関心のないカテゴリーの広告が言っていることは、せいぜいひと言ぐらいしか覚えていない。そのため、ひと言で肌を切らないというベネフィットだけに絞って伝えた。
・インサイト(消費者が持っている気持ち):消費者のどういう気持ちをかつようできるか
・プロポジション(消費者への提案):そう思ってもらうために、どうするか
・ポジショニング(パーセプション・ゴール):どう思ってほしいのか
を何度も行ったり来たりしながら進めることが大切、ということか。