様々な機械がセンサーを取り付け、企業はデータを得られるようになった。
いわゆるBI化が多くの業界で進んでいる。
無知だったのだが、「酪農」という昔ながらの仕事が、かなり前からBI化を進めていた。
浜中町農協では、品質管理のために、生乳、生菌、土壌・飼料分析を行っている。
例えば生乳分析では、毎朝酪農家から届けられる牛乳を機械に通すことで、ものの10分ほどで牛乳に含まれる成分を分析することができる。
そしてそのデータは、プリントアウトして、各酪農家に手渡されている。
酪農家は得られたデータによって、育てている牛の健康状態を把握したり、改善のための次のアクションに繋げている。
これまで各酪農家の感覚にまかされていた牛の育て方をデータ化することで、酪農家にも農協にもその知見はたまり、最終的に浜中町全体の牛乳の質を上げることに繋がった。
保守的と言われがちな農協の中で、よくこのような技術センターが作れたということと、昭和56年という非常に早い段階からデータによる管理が大切と唱えていた人がいたことが驚きだ。
もちろん、野菜や果物を育てている農業もBI化、ハイテク化が進んでいるのは理解している。
ただ、こうした酪農の世界でもデータ化により、味の向上、牛乳のブランド化まで実現できている。
特に、浜中町の牛乳は、日本のハーゲンダッツアイスクリームが提供する原料に選ばれるほどにまで大きなブランドに成長した。
広告会社として、驚きなのは、こうしたBI化が進んでいるということもそうだが
「PDCA」がきちんと回っている、ということだ。
酪農家は、牛乳をデータ化し、そのデータをもとに、健康状態を把握し、その日の夕方には餌の配合を変えて健康改善に繋げている。
これを2日に1度のペースで年中行っており、きちんとデータから次に繋げることができている。
一方、広告会社が請け負う仕事には、PDCAまでいかず、「ひたすらCで終わる」ことも少なくない。
もちろん、ダイレクト系クライアントでは、日々データを見ながら運用、改善を続けているが、そのようなクライアントが全てではない。
あるキャンペーンで行った広告や屋外施策など、その広告施策の効果は調査によって測られる。
ただ、その知見を元に、きちんと次のクリエーティブや次の施策に落ちているか、というときちんとPDCAを回転させているところは多いとは言えない。
広告会社も、実施した施策の説明責任はあるので、その効果を計り、前回よりも効果はありました。次はこうしましょう、と提案はするが、実施したプロジェクトは一つ一つ完結され、その知見を活かされず次の競合が始まってしまう。
クライアント側にも、広告会社にも問題があるのかもしれない。
データはたまっても、活用しなければ何の価値も無い。
今で言うとDMPなども流行ワードのように飛びつく声も多いが、データをためたあとに、きちんとそのデータを読み解き、施策にフィードバックできる人がいるかが大切だ。
酪農家がきちんとPDCAを回せているのは、それが自分の生きて行く術に直結しているからだろう。
たまったデータを改善に繋げなければ、
牛が死んでしまうかもしれない
美味しくない牛乳ができてしまうかもしれない
他のエリアの牛乳にブランドが負けてしまうかもしれない
そんな環境で働いていれば、嫌でもPDCAは回る。
PDCAを回すには、そんな責任があるか、ないかの違いなのかもしれない。
広告会社もそんな責任をもって、一つひとつの仕事に向き合う必用がある。