時事ネタをうまく取り入れた漫画と言えばゴルゴ13だが、
ゴルゴ13も広告会社がビッグデータを活用した話を
現在ビッグコミックで連載を行っている。
確かに、広告会社も
ビッグデータは大きなビジネスになるので
データの売買から、クライアントデータや広告会社保有のデータとの統合化、
ビジネスを行いつつ新たなデータを生み出すビジネスクリエーションなるものなど
多岐にわたる部署でビッグデータはビジネスの進め方に大きな影響を与えている。
データが増え続け、それを無料であったり有料で購入できるようになった現在
多くの広告会社ではデータを起点に深い分析が可能な部署
データサイエンティストが在籍する部署が出始めている。
この部署はSIerにも近いが、
コミュニケーションで活用可能なデータ活用を起点とした部署となる。
今まで全く分からなかった
何故自社商品が売れなくなってきたのか
他社がどのような顧客を取り入れていることでトップシェアを奪ったのかなど
今までさっぱりわからなかった課題やファインディングスも出るようになっている。
専門的なデータサイエンティストなる部署の人が続々と結果を出しているなか
いままで行ってきたマーケティングを担う部署
いわゆる戦略を組むストラテジックプランニングと呼ばれる部署は大きな変革をもたらされている。
これまでの「アンケートでは●●%が■■と言っているため、△△なのである」
といった意識データを起点としたプランニングや
「きっとここが課題だと思われる」という直感的なプランニングや
「他社がこうなので勝ちパターンはこうなのだ」という事例に基づくプランニング、
言葉を選ばずに言えば「コトバ遊び」とも言えるような
コトバの細かなニュアンスによるプランニングを行ってきた人にとって
このデータサイエンス領域はかなりやっかいなものになっている。
データサイエンス領域に行く場合
どのようなデータがあるかはもちろん
それを使うと何ができるか、というアウトプットイメージができないと使いこなせない。
また、それらを使いこなせるツールが社内に有ったとしても
どのように使えば良いのか、誰に聞けば良いのか、という課題にぶつかり
データサイエンス領域の部署とこれまでのストラテジックプランニングの部署との
真の統合ができずに、結果、乖離が徐々に拡大するという結果に繋がる。
データサイエンス領域に長けた部署に
「●●が売れていないのだがどうしたらよいか」
という相談が持ちかけられた場合
自社のデータやクライアントのデータをひっくり返し
仮説を元に、何故か、何故かを繰り返し
ドリルダウンの「報告書」が出来上がる。
このデータには今までさっぱりわからなかった顧客の動きや
他社がどの層を取り入れたことで市場で売上を伸ばしたのかなどがわかる。
クライアントも「そうだったのか!」と驚くことも少なくない。
ただ、問題は
このデータサイエンス領域の部署がマーケティングに長けた人がいない場合が多く
その後の進め方が難しくなる。
いままでわからなかった現在の市場の状況がわかるようになる。
だが、わかるからといって、その後どうしたら自社商品が売れるかがわからない、
という新たな課題にぶつかる。
他社は、●●カテゴリを週2-3回利用するヘビー層を拡大することで
購入率及び平均単価も挙げることができている。
一方、自社は、A社にヘビー層及びミドル層まで取られており、
ライト層は何とかプロモーションで取り込めているものの、
一回購入でそのまま離反してしまい、結局プロモーションが終わると
市場バランスが元に戻る、みたいなことがわかる。
クライアントからすると
いままで見えていなかった市場の動きがわかったという満足感を持つ。
ただ、
結局私たちはどうすればよいのか?という新たな課題が残る。
このような課題が現在の広告会社には多く出てくる。
データサイエンス領域なる部署は
データを元に深く深く分析する方に進みがちで
色々と見えなかった課題を明らかにする探索型のアプローチを行う。
一方で、
これまでの戦略パートを担ってきたストラテジックプランニングの部署は
データも触れない、それがあったとして何ができるか想像できない
という状況でとどまっており、高度なプランニングができないという状況から進んでいない。
もう一度クライアント視点から考えると
広告会社のデータサイエンティストの部門からは色々と
知らなかった現在の状況が分かってきた。
ただ、わかったがこの部署からはどうしたらいいのかという
How to Sayがあがってこない。
How to Sayを得意とするストラテジックプランニングの部署の人間は
データを使えないので、データが上がってきて都合のよいデータをつまんで
ストーリーを作り、プランニングする。
しかし、データサイエンス領域の部署から上がってきた報告書を元にしては
戦略が組めない、という状況が出てくる。
これらの部署は、お互いが
「データのことがわからない旧来型のプランニング部署」と思い、もう一方の部署も
「データを分析するパーツ屋さんからあがってきたが、結局戦略に使えるデータがない使えない部署」という
お互いが不満を持つような構造になりうる。
わかるけど、その後どうしたらよいかわからない。
この連結がうまくいかない、まだうまくいっていないのが現状だろう。
データをわかり、きちんと戦略に活用するには
データサイエンス領域の部署の人材が、クライアントと日々対峙している
ストラテジックプランニングの部署に行ってみる必要がある。
こまかな言い回しや説得のためのロジック構築、
それこそフォントの太さ大きさや
紙やデジタルプレゼンといったテクニックも必要となってくる。
また、ストラテジックプランニングの部署の人材も
数字を毛嫌いせずに、データを使ってみる、
データを元にどうしたら戦略が組めるか、仮説を導けるかをバックキャストしてみる
ということを考えないといけない。
広告会社のデータ売買、データサイエンス領域に長けた専門部署の設立という
広告会社のビッグデータ対応という話題が持ち上がりやすいが、
現場ではこの部署と旧来のストラテジックプランニングの部署との
真の融合まだまだ課題となっている。
大学で言う文系から理系に転向する理転と
その逆の文転という言葉があるが、
経験上、理転よりも文転の方が行いやすい。
数字を使った専門的な部署に頭を切り替えるよりも
言葉を使いこなす部署に行く方がハードルは低いのではないか。
データサイエンス領域の行う
仮説の出し方や、ツールを使いこなす技量、データドリブンな考え方などは
なかなか身につけるものではない。
ストラテジックプランニング領域の行う
マーケティング視点でのモノの考え方や
クライアントを突破するためのロジック構築や
コトバの選び方も簡単に身につけれるものではない。
ただ、クライアントにとっては
これらの真の融合を行い
自社の課題を解決する戦略を考えてほしいと思うだろう。
真の融合のためには
まだ2-3年は人材強化に多くの広告会社には必要となるのではないか。
お互いの部署が補い合わないといけない
と気づく日が早く来てほしい。