Digital

マスから急激なデジタルシフトで陥る無風の施策結果

年々視聴者の減っていくマスを見切り、デジタルに大きく舵を切るクライアントがここ最近多い。

かなりドラスティックに予算を見直し、マスをやめるという傾向もみられる。

減らす、ではなくやめる、という決断だ。

 

そしてマスはやらない代わりに、デジタルのみで戦う、というオーダーが増えてきた。

 

クライアントの言い分はおよそこうだ。

テレビはもはや見られていない。

いっぽうでスマホは誰もが持つ時代になっており、精緻なターゲティングも実現できるようになっている。

画面占有率の高いスマホをベースに、ターゲティングすれば、マスよりももっと効率的な結果が得られるのではないか。

F1層、F2層といったバックリしたマスのターゲティングではなく、○○に興味を持った20代女性といった細かなターゲティングを軸にコミュニケーション施策を設計せよ。

 

そして、多くのクライアント、多くの商品でデジタルのみで、バキバキのターゲティングをした施策が設計される。

編集タイアップも誘導はバキバキのターゲティングを行い、YouTubeやバナーもバッキバキのターゲティングで配信。

かなり研ぎ澄まして狙っており、本当に興味関心のある人だけにしか広告は当たらない。

 

ダイレクト系のクライアントはここで濃いターゲットを掘り起こせるかもしれないが、非ダイレクト系のクライアントはこれらの施策の結果に戸惑うことが多い。

 

シンプルに言うとターゲティングしすぎて、あまりに”無風”な結果で終わる。

 

設計した担当者にはまず広告があたらない。

かなり狭めた濃い層を狙っているから当然だ。

 

媒体社からあがってくる施策結果は、想定のCPMより良い、想定のCPCよりも良いという結果は得られている。

だけど売り上げがついてこない。

 

おかしい。

 

無償でついてくるブランドリフト調査もやってみたら、接触者グループは明らかにリフトアップしている。

接触していないグループよりもブランド認知も購入意向も高い。

リフトアップ値も業界平均よりも高いと出ている。

 

でも売上は伸びていない。

やっぱりおかしい。

 

施策結果も無風で、売上も無風だ。

 

もっと結果を深掘りしたくても、デジタル施策の投下量が少なくて定量調査もできないという悩みも出てくる。

 

施策結果が無風で終わってしまう要因に、市場ではターゲティングできない層がかなり多く存在しており、その層がバックリとしたマス施策ではフォローできており、その群をきちんと動かせているという仮説が考えられる。

例えば、○○飲料に興味を持っていると判断できるデジタルの在庫は、実際に興味を持っている人の何分の1しかデジタルでは判別することができず、ターゲティングの在庫量も限定的となる。

 

○○飲料のサイトを調べている、過去類似した広告をクリックした、類似した記事を閲覧したという情報も嗜好を特定するには大切だが、本当に興味を持っている人の中でもかなり一部の人となる。

その限定的な人を狙っても売り上げへの影響は微々たるものだ。

 

また、人は直感的でもあり、理性的な生き物だ。

 

今まで一つもそんな兆しを持っていなかった人も、急にその商品を買うこともあるし、周りが飲んでいるからというなんとなくで商品を手に取ってしまうことも少なくない。

そのため、ガチガチのターゲティングだけではなく、それと追加して予算の2-3割は、ガチガチではない施策、PRやインフルエンサー施策、キュレーションやニュース系メディアなど、一見して非効率だったり効率の見えにくいチャラ目の施策も入れる必要がある。

 

なんか流行ってそう。

なんかみんな使ってそうという空気づくりをしていかないと、関心層の周辺の大きな群を捉えることが難しいということに徐々に気付く。

 

2-3年前にデジタル領域で「蟹工船」というワードが出回った。

デジタルの膨大で非人間的な業務を「蟹工船」と揶揄した形で使われていた。

 

ここ最近は「無風」というワードが出回りつつある。

ターゲットを狭めたことで一軒効率が良さそうなデジタル施策も、気付けばひっそりと施策が終わってしまっており、売上は大して変わっておらず、当たった人には効果がでているという謎の現象に戸惑う。

 

そして「無風」の反動で、改めて効率の見えにくいチャラ目の施策も必要なのではないかと今は見直されている。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

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