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AIは広告会社にとって敵か

今日のヤフトピのこのニュース『ソフトバンク、新卒採用に「IBM Watson」活用 エントリーシート確認時間を75%削減』。

結構、しびれるなぁ。

 

過去のエントリーシートのデータを学習させておき、就活性のエントリーシートを項目ごとに評価。

AIが合格と判断すれば、そのままエントリーシートを通過し、不合格と判断すれば、人事担当者が内容を確認したうえで、合否の最終判断を行う。

要は、人間のチェックの前に、機械的に事前チェックをするという目的のためだ。

 

これによって、エントリーシートの確認時間を75%も削減とはかなり衝撃的な数字だ。

 

過去、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が今後10-20年で47%の仕事が機械に取って代わる、と発表して大きくニュースになった。

そのときも、「あと10年ほどで、人間の仕事が機械にとって代わるのか~」と思いつつも、どこか自分ごと化しておらず、「そうはいっても、広告会社の今のプランニングの仕事までは取られることはないでしょ」と人ごとに感じていた。

 

広告会社ってただクライアントと媒体を仲介しているだけでなく、細かい調整ごとがとても多い。

また、相手は人なので感情を持つし、論理的な進め方だけでは絶対に通らない。

 

こういうのが好きだから、効率悪いのはわかるけどやりたい。

こういうのはなんか嫌だから、やりたくない、というのはよくあること。

今でも、広告会社と媒体社は持ちつ持たれつな関係は残っているし、そこにも人間の感情が介在する。

あれだけやってくれたので、恩を返す意味も込めて今回は発注しよう、というのは今でもある。

 

そして、ここ最近のAIブーム。

 

AIの研究もいたるところで進み、AIを活用した事例が次から次に発表されている。

医学分野で使われ、人間が診断で見落としていた遺伝子を発見し、適切な診断を行うことができたであったり、人材派遣のマッチングを高い精度で行うなど、いろいろな業種で使われている。

 

それでもまだ、AIの活用は人が行っている作業の短縮化であったり、膨大なデータベースから特定のパタンを発見するための時短を実現するものくらいにしかとらえていなかった。

 

どちらかというと、AIは削減業務には強い、という感覚だったが、ここ最近は何かを生み出すという、クリエーティビティの部分まで踏み込む事例も増えつつある。

 

 

MicrosoftのAIであるTwitterアカウントりんなは有名だが、SNSでのコミュニケーションで使われているし、SONYが開発するAIのフローマシーンズは作曲ができる。

 

これらは、事前に学習しておいた膨大なデータから新しいアウトプットを生み出す。

人間が思いつかないような表現を制作することができる。

 

電通がAICOというAIコピーライターを開発し、AIが作ったコピーを新聞広告で掲載するということもPR的に行ったのもニュースになった。

 

また、マッキャンエリクソンが人材不足のために、クリエーティブディレクターが担えるAIを導入したのも話題になった。

ACCの広告アワードで受賞した過去10年分のデータを学習させておくことで、クライアントの要望に合わせたCMクリエーティブを開発できるようだ。

 

また、ランジェリーブランドのコサベラは、AIを用いたマーケティングプラットフォームを用いて、デジタルプランニングを実施。

最初の1か月で、ROASを50%改善、広告費を12%削減した。

これによって、これまで契約していたデジタルマーケティング企業との契約を打ち切った。

 

ここまで来ると、プランニングもクリエーティブもAIにかわることも十分にありうるようになってきた。

それも急速な勢いでその波が来ている感がある。

 

過去の膨大なデータをきちんと整備し、データを蓄積し、学習することに成功すれば、人が勘や成功体験で行うプランニングではなく、統計的に成功率の高い機械的なプランニングが行われる。

 

働き方改革真っ只中の広告会社にとって、人の仕事を機械に置き換えていくことは上層部としても望ましいことでもある。

 

そうなると広告会社はどこで儲けるのか。

どこで差をつけるのか。

AIの精度が高い広告会社が競合プレゼンでは勝つというのか。

 

AIに学習するためのインプット作業で差をつけたり、AIが生み出すアウトプットをより魅力的に表現するためのブラッシュアップ作業で差をつけるなどもあるだろう。

いずれにせよ、広告会社だけでなく、内製化を進めるクライアント側が、自社でプランニングを行えるようにAIを導入することもありうる。

 

モノを売ることはこれからも一生無くならないことではあるが、それを機械が解くのか、機械と人間がタッグを組んで新しい解き方を開発するのかが大事な気がする。

 

こういう機械vs人間の構図になりがちなとき、機械×人間で両方のいいところ取りするのである、とかズルいことを広告会社は言いがちだが、リアルにその方向で生き残るあり方を考えないといけない。

 

付加価値がだせない仕事は今後も機械に置き換わっていくのは間違いない。

今、自分は付加価値をきちんと出せているか。自問自答が必要だ。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

三児のパパ

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