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This article was written on 12 1月 2017, and is filled under advertising, Branding, Insight, Marketing, Music, Strategy, 事例.

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人気アーティストのヒット戦略は広告キャンペーンの設計と同じだ

今週のマツコの知らない世界では「小室哲哉」の特集だった。

その内容が広告会社のプランニング業務に通じるところが多々あり、非常に興味深い内容だった。

小室ファミリーといえば、90年代前半から、trf、hitomi、安室奈美恵、華原朋美、dos、篠原涼子、globe、ダウンタウン浜田、鈴木あみなど立て続けにヒットを連発した小室哲哉プロデュースのアーティストたちだ。

この時代の小室ファミリーの勢いは凄まじかった。

どこに行っても小室ファミリーの曲が流れていたし、小室ファミリーが日本の音楽のど真ん中にいたのは間違いない。

僕も学生の頃、1日でも早く手に入ると噂されるお店にCDを予約しに行ったし、こんなにも出す曲全てが新しく良曲ばかりだと驚いた記憶がある。

あの頃のカルチャーを作っていたのが、小室哲哉だ。

番組では、これらヒットしたアーティストが、何故ヒットできたのか、小室哲哉は何を狙ってプロデュースをしていたのかを紹介していた。

まず、trfのEZ DO DANCE。

trfを結成する際、trfの狙うべきターゲットを『ホロ酔いの大人』とした。

あの頃のカラオケは、お酒を飲んだ後にホロ酔いになりながら行くお店だった。

カラオケの中でもお酒を飲みながら楽しむのが普通だった。

「カラオケ=お酒」の時代に、お酒を飲む世代をターゲットにし、ホロ酔いしながら、カラオケで盛り上がってもらうことを計算して結成されたアーティストがtrf。

EZ DO DANCEの曲中にサビのところで「フォー」という掛け声も入るが、それもカラオケでの掛け声を狙って入れられたものだ。

また、彼らならではの特徴は『五人組にしたこと』だ。

これまでの音楽番組では、カメラ割りが定番化されていた。

歌唱シーンはボーカルがメイン、間奏中はバンドメンバーを撮るという、決まった表現が殆どだった。

trfの強みは、歌唱力だけでなく、ダンサーとDJが存在していることで、ボーカルが後ろにいても、本格的なダンスを間奏中に挟んだり、サビの盛り上がり部分でDJによる煽りを挟むことで絵にバリエーションを出すことができた。

つまり、他のアーティストにはできない形で、見ていて楽しくなる表現という「新しい価値」を作った。

そして、華原朋美のI'm proud。

華原朋美にまとわせたイメージコンセプトは『セレブ感』。

セレブ感を演出するためプラダ、グッチなどハイブブランドの洋服を選び着させた。

ただし、あまりにも手の届かない存在にならないように、歌詞には切実な女の子の気持ちを込めて作った。

あの頃、セレブなアーティストといえば海外で活躍するマライヤキャリーくらいで、日本には代表するような女性アーティストはいなかった。

そして、人気絶頂の階段を登っていくシンデレラストーリーを生活者に見せることで、生活者もその姿を応援していく構図を作り、みんなが熱狂した。

これらから見られる広告キャンペーンの戦略設計に共通する部分は、『ターゲット、商品USP、コンセプト』だ。

広告キャンペーンを設計する際、ターゲット設定は非常に大事な要素。

誰を狙うのか。

その人は、どんなインサイトを持っているのかをプランナーは頭を悩ませて探し出す。

このとき、チームメンバーが多いときはみんなが同じターゲット像をイメージできるようにターゲットに名称をつけたりする。

trfでは、『ホロ酔いの大人』。

例えば、最近の広告キャンペーンで言うと、ドリームジャンボ宝くじのターゲットでは『どうせ当選しないと思っているけど、もしかしたら当たったら嬉しいと何処かで期待している若年層』。

7億円が当たった時を想像して、事前に買う商品を予約するというネタ的キャンペーンであり、当選しないことはわかっているが、どこかでもしかしたら!?と期待してしまうスケベ心をうまく掴んだコミュニケーションだ。

そして、商品USP。

他にはないその商品の強み、機能効能をキャンペーン設計時には見つける作業を行う。

広告主側は当たり前の機能でも、生活者目線でみると新しかったり、とても大きな価値に見えることもあり、広告会社も一緒に見つけていく。

trfで言うと、ダンサーやDJのいる『五人組にしたこと』となる。

広告キャンペーンでいうと、例えば、アリエールの『100種類の汚れを一発洗浄!』。

他の洗濯洗剤にはない独自の機能を立たせることで、購入の理由作りを行う。

100種類頑張って見つけていった作業もすごいし、生活者側からすると、ケチャップの汚れ、泥汚れ、…など、およそ殆どの汚れを落とせる洗濯洗剤に見えるため、アリエールを買っておけば間違いない、という購入の動機付けにもなる。

そして、コンセプト。

華原朋美では『セレブ感』。

どのようなコンセプトでキャンペーンをするのかを設計する。

こちらもターゲットと同じように、チームメンバーの目指すべき方向性を揃えるためにも、わかりやすい名称を付けることが多い。

例えば、グリコポッキーの『シェアハピ』。

みんなでポッキーをシェアしてハッピーになろうというコンセプト。

歌って踊って、一緒に食べれるポッキーがコミュニケーションツールになるというもの。

他には、アジエンスの『ほの色アカデミー』。

ほんのり色っぽい(ほの色)女子になるための学校というコンセプト。

ベタでわかりやすい色気ではなく、イマドキの女性が好むほんのり色っぽさを学べるコンテンツをCMやデジタルなどで展開していく。

実際は、ターゲットのインサイトと、その商品にしか言えないUSPを紡ぎ、コンセプトに落とすという作業を行う。

いかに鋭いインサイトを見つけられるか。

競合商品には言えない独自の商品USPを見つけられるか。

その二つを繋げて、さらに生活者が参加したくなるキャンペーンコンセプトを設計するのは簡単ではない。

これらうまく設計されているものでいえば、オロナインの『知り100』だ。

ターゲットはキッズとその親。

キッズは色々なものを触って楽しんで成長する世代。

親は、子どもの成長を何よりも願うので、どんどん外で遊んでほしいと思っている反面、怪我をしてほしくないという心配もしている。

商品USPは、昔からあるロングセラーで安心でき、擦り傷・切り傷など万能な皮膚薬。

そしてキャンペーンコンセプトは、キッズのよりアクティブな行動を促す『行ってみよう。やってみよう。からだ、つかおう。』

サイトでは「知ったつもりにならないでリアルに体験したほうがいい日本の100」という名称にして、日本の知らなかった文化や楽しみを紹介するアイデアジャンプをしており、子どもから大人まで楽しめるものとなっている。

オロナインがあるから安心して目いっぱい楽しんでいいんだよ、という訴求であり、非常に秀逸な設計がされている。

小室哲哉の話に戻ると、すごいところは他にも沢山ある。

複数枚のCD購入を促すために、異なるジャケットを用意するということを新たに行った。

今でこそ、初回盤と通常版など複数ジャケットを用意して、枚数を稼ぐ販売戦略が当たり前になったが、当時は画期的な取り組みだった。

安室奈美恵のSWEET 19 BLUESでは4種類、それぞれ100万枚ずつジャケットを用意した。

また、アーティストの選定方法も戦略的だ。

オーディションを行う際、「好かれる声」のアーティストではなく、「嫌われない声」のアーティストを選んでいる。

篠原涼子など鼻に抜けるような声のアーティストを選定する理由に、「嫌われない声」の方が分母が大きくてヒットに繋がりやすい、という理由からだ。

更にアーティストには、親近感があり、生活者が頑張ればそこにいけると思えるくらいの距離感を重視する。

手が届きそうだから、彼ら彼女らのファッションや振る舞いを真似したくなるし、自分ごと化しやすいものとなる。

また、統合プランナーという広告会社が課題としている動き方も、実は小室哲哉はやっていたりする。

90年代にヒット曲を量産できた理由に、『作詞家、作曲家、編集家の3つの役割を小室が1人で同時進行できた』ことにある。

すべての工程を一人でできるから、ひらめいたイメージをそのまま音に落とし込むことができた。

最初から最後まで全部できるというのは圧倒的に強い。

広告会社は大手になるほど、縦割り構造の組織になる。

営業、ストラテジックプランニング、メディアプランニング、クリエーティブなどそれぞれが分業だ。

さらに、メディアはテレビやラジオ、新聞、雑誌などそれぞれのメディア毎に担当者はいるし、クリエーティブもマス寄りな人、モックアップまで自分で作れちゃうデジタル寄りな人までいて、一人で全部やれる人は少ないのが実情だ。

マツコの知らない世界の「小室哲哉」の特集、広告会社の行っている業務とすごくリンクした番組でついつい録画したものを繰り返しみてしまった。

広告会社は転職したら他の会社では全く使い物にならない特殊スキルだと思っていたが、ベースとなる考え方や、アイデアの設計の仕方は他の業界とも同じなんだと認識できたのが発見だった。

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