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This article was written on 22 1月 2017, and is filled under advertising, Branding, Marketing, Research, Strategy, Target.

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広告費3倍差もあるクリントンを打ち破ったトランプのコミュニケーション戦略

アメリカの次期大統領選で、ドナルド•トランプはクリントンを破り勝利した。
当初、トランプ氏の
クリントンは、この選挙戦で、2億1,140万ドルのテレビ広告費を投下した。

トランプの約3倍の量だ。

3倍の広告費の差は非常に大きい。

広告会社では「予算はないけど競合商品に勝ちたい」という相談をよく受ける。

広告会社の使う尺度にSOVがある。

Share Of Voice、競合他社の広告費含めた業界の広告出稿量を100として、その中で自社がどれくらい広告を出稿しているか、という尺度だ。

例えば、スマホゲーム業界はここ数年で出稿量が増加しており、数年前に2000GRP出稿するのと、今2000GRP出稿するのでは意味が異なる。

同じようなゲームの広告が流れている中で広告を出稿しても、その中の一つとして捉えられ、記憶に残りにくいのだ。

そのため、「SOV的にこの予算ではかなり難しい」と回答せざるを得ない。

いかにエッジのとがった広告表現をしても3倍もの差をひっくり返せ、といわれても相当難しい。

その3倍の大きな壁を打ち破ったトランプのコミュニケーション戦略はかなり凄いことだ。

グローコム社長岡本氏が宣伝会議で大統領選のポイントについてまとめていたので抜粋する。

ショッキングな内容も見慣れてしまえば感覚がマヒし、見る人は耐性をあげてしまう。

当初、トランプの差別的な発言は大統領として不適切だと指摘されたが、クリントンがその発言シーンを繰り返し放送したことで、見る側が慣れてしまった。

つまり、中途半端に謝罪したり釈明せず、一貫して発言を曲げないでコミュニケーションしたこと、さらにクリントン側が揚げ足を取る形で繰り返し放送したことで、悪とされた発言も、見慣れて既視感を感じ、悪と認識されなくなった。

日本でも生活者からクレームが来て広告が掲載中止になることは度々みるが、勇気をもって言い続けるというも意識としては大事なのかもしれない。

クリントンはターゲットを絞り込まなかった。女性初の大統領をアピールして、女性層を取り込もうとしたが、共感は広がらず、黒人、白人、ヒスパニック、あらゆる層に対して同様のメッセージを送ったが、支持は集められなかった。

トランプは地方に住む白人層にターゲットを絞り、そのニーズに徹底的に寄り添い、アプローチするセグメント型戦略が勝因のひとつでもあった。

クリントンがすべての人を狙ったマスメディア型ターゲット戦略だったのに対し、トランプは特定の人に絞ったセグメント型ターゲット戦略をとったのだ。

まぁ、広告会社ではターゲットをきちんと設定することは当たり前だが、すべての人がターゲットであるというターゲットの立て方ではコミュニケーションも総花的にならざるを得ず、特定の強い信者の共感を得ることは難しいということだ。

トランプは、Twitterを通じて自分の生の声をリアルタイムで発信し、直接支持者層との絆を作っていった。

更に、新興ニュースサイトが過激な発言に賛同し、クリントンをやり玉にあげ批判を書いた記事をどんどん掲載していった。

生活者だけにとどまらず、メディアも味方にしながら、ショッキングな内容を量産するという循環を作れたのも大きい。

オックスフォード英語辞典が2016年の今年の単語に選んだpost-truth(ポスト真実)、つまり、世論形成において客観的事実は影響力を持たない状況を生んでしまった。

大統領選の時期、事実かどうかも分からない情報が量産されていったが、ソーシャルメディア時代の今、生活者が見たいと思うような情報ばかりがタイムラインに表示されるようになっている。

アルゴリズムによって、生活者の嗜好に合わせた最適な情報がその人に配信される。

実際その情報が正しいものかは別に、その情報が好みの生活者にはどんどん提示されるようになっている。

つまり、ニューヨークタイムズやワシントンポスト、テレビなどがこれまで発言してきた「正論」や「事実」が、真の正義であったかもしれないが、その正義が生活者の判断軸には影響を及ぼさなくなっている。

その事象を岡本氏は「フィルター・バブル(フィルターのかかったシャボン玉)」という名称で、その人その人による独自の情報エコシステムを定義している。

人種差別や性差別発言を許さないというアメリカ国民共通の正義だったが、トランプは臆面もなく差別的な発言を繰り返し、多くの国民もその発言に熱狂した。

少なからぬ人が「反差別的言動」に対する「検閲」に息苦しさを感じ、反発していた中、それをトランプが代弁していたのだ。

通常のマーケターなら、可能な限り発言に気を付けた正義を真ん中に置いたコミュニケーションを考えるのではないか。

刺激的な発言を許さず、失言したことも即座に謝罪することをすすめるだろう。

このトランプのコミュニケーション戦略は、これまでのマーケターの常識が通じなく、新しいやり方だったのは間違いない。

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