Marketing

ロークラス マーケティング

東京で広告の仕事をしていると、少しズレた感覚でコミュニーケーションを設計してしまうことがある。

広告業界はいまだ、高給取りだ。

マスが効かない、広告が見られない、メディアの多様化が進み、総合系の広告会社はじわじわ給与が下がりつつあるのも事実だが、それでもまだ他の企業に比べるとかなり高い水準にある。

また、女性の社会進出に伴い、共働きも毎年右肩上がりだ。

つまり、広告会社の社員の中でも共働きは増えており、Wインカムによって、より高い世帯年収を維持している人が増えている。

そのため、広告会社は基本的にハイクラスな生活をしている人が多い。

都内に一軒家を持つ、都心周辺の高層マンションに住む、外車を乗り回す、など、リア充な生活を楽しむ世帯が多いということだ。

東京には、上には上がいて、毎年数億の所得を得ている人や信じられない位の資産家がいるが、そこは別格として、広告会社の人も、VERYに出てくるような生活が入社数年で手に入る。

でも、その感覚、かなり危うい。

あるブランドのコミュニーケーションを設計する時、もっと憧れのブランドに見えるように、アイディアルターゲットにハイクラスな人を設定したり、ブランドを引き上げるために、皆が憧れるハイクラスな世界観を身にまとわせることもある。

高給の広告会社社員からすると、普段自分のまわりにハイクラスな人が多く、それが日本のスタンダードに見えてしまうことで、つい頭の中にある日本の歪んだ縮図から物事を考えてしまう。

ママ友とパーティルームを貸し切って週末パーティをしたり、友人の別荘に家族でお泊まり会に出かけたり、海外旅行で散財し、贅沢なホテルで優雅な休暇を過ごすなど、充実した生活を過ごすことが普通に思えてしまう。

東京の生活を離れ、地元に戻ってみると、VERYママみたいな人なんて、まずいないことに気づき、ハッと目がさめる。

住む場所にもよるのは当然だが、地方のすたびれた場所に実家のある自分からすると、そんなハイクラスな生活は現実離れしていて、都会という遠い国の出来事のように感じてしまう。

実家周辺を俯瞰してみてみると、ハイクラスという言葉があるとすれば、ロークラスという言葉が近いかもしない。

普通の生活。

また、それ以下の生活。

自分の周りにはそんな友人が少なくない。

友達に、喧嘩の延長で人に火をつけて大事故を起こして逮捕された奴もいる。

20代前半で借金まみれになり、今は名前を替えて、人に知られない形で生活している友人もいる。

あっち系の人をパパに持つ女性と結婚し、金銭トラブルを起こして、離婚、夜逃げした友人もいる。

皆、ハイクラスとは遠い世界を生きている。

ロークラスな生活。

一時期、マイルドヤンキーという、いい言葉が開発されて、地方の経済力、魅力的なターゲット像が注目されたが、あの感覚に近い。

いや、それ以下かもしれない。

治安が悪いのは当たり前。

勉強して上に上がるということが否定される環境。

周りが地元に残るから、皆同じように残る。

高い買い物はできないが、最低限の生活を続けていくことでも十分幸せと感じる。

この視点って凄く大事だと実家に帰るたびに思う。

高い水準のコミュニーケーション設計ではなく、ロークラスの視点のマーケティングの必要性。

飲料や消費財、家電でも良いが、ロークラスに支持される商品もある。

そんな彼らが選ぶ基準、求める価値観もあると思う。

彼らに支えられるブランド作りもあるかもしれない。

移り気でミーハーな都会の人に比べて、長く商品を愛してくれる忠誠心の強い層が多い気もする。

ロークラスマーケティング、もっと深ぼってみたいテーマだ。

関連記事

  1. 最近、クリエーティブに回帰することをよく考える
  2. 顧客体験・CXデザインって結局何が大切なのか
  3. タワマンを狙ったミドル富裕層マーケティング
  4. 多くのパーパスが「自分らしく生きることを支える」とカニバっている…
  5. トレンドの先の新時代を形成するフォーキャスト型の視点
  6. ヒトは金魚より集中力が短くなり、コンテンツ消費速度が上がる
  7. ターゲットは国民全員、オールターゲットのブランドの解き方
  8. プランナー視点で総合代理店がネット専業に負けている理由を5つ考え…

Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

三児のパパ

My Social Media Account

  1. Facebook
  2. Instagram
  3. Twitter
  4. Booklog
  5. RSS

最新記事

PAGE TOP