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Rポイントカード参入と広告会社のマーケティング活動

10月1日に、楽天がRポイントカードの提供を開始して約3週間ほど。
どれくらい順調に会員数を増やしているだろうか。

また、広告会社にとって、この動きがどんな良いことに繋がるだろうか。

Rポイントカードは、コンビニや飲食店などの実店舗でも「楽天スーパーポイント」が使えるポイントカードだ。

リアルやネットで貯めたポイントを、楽天市場などの楽天グループサービスや加盟企業の実店舗などで「1ポイント=1円」で利用できる。

楽天の三木谷社長が「楽天市場を立ち上げた時と同じくらいの興奮を覚えている」とコメントしているように、ポイント業界だけでなく、楽天にとっても大きな動きになりそうだ。

 

そもそも、リアル店舗で成功しているポイントプログラムサービス提供企業は、

Tポイントを提供する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」と、
Pontaを提供する「ロイヤリティマーケティング」の2強だ。

 

Tポイントは、ファミリーマートやTSUTAYAなどで利用でき、現在の会員数は約7,200万人。これはYahooポイント2,700万人も含む。

Pontaは、ローソンやケンタッキーなどで利用でき、こちらも現在会員数は約7,200万人。リクルート1,000万人の会員も含む。

両社とも、大手ポイント保有企業を飲み込みながら拡大を進めてきた。

また、スマホアプリを両社とも展開し、ポイントカードを使用しているユーザーに、メールやプッシュ通知で購買のアプローチができるようにデジタル会員への誘導もはかっている。

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そこに突如、参入したのが、約9,400万人の会員を持つ楽天だ。

楽天は大手ショッピングモールのため、一人の顧客がAという商品以外に、Bを買った、Cを検討した、という楽天内の行動が把握出来る。

その楽天が、「リアルの場」でのマーケティングデータの取得に乗り出した。

これによって、WEBで悩んだもののリアル店舗で手に取り、吟味した後購入した、というオンラインとオフラインを跨いだカスタマージャーニー構造がわかることになる。

 

現在、Rポイントカードが提携しているのは、

出光、大丸、松坂屋、サークルK、サンクス、ポプラ、生活彩家、ミスタードーナツ、プロント、カフェソラーレ、ミュゼプラチナム、日通、アリさんマークの引越社…など。

つまり、Aという顧客が、昼間サークルKでコーラとパンを購入し、夕方ミスドでポンデリングを購入したことや、休日の昼間、松坂屋で衣類と鞄を購入し、夜、実家の両親に楽天のオススメスイーツを贈った、みたいなことがわかる。

ポイントプログラムサービスを展開する企業の強みは、業種を跨いで、顧客の購買データを取得できることにある。

おむつとビールで有名なマーケットバスケット分析が業種を跨いで可能になり、そのデータを元に、キャンペーンの提案などに繋げるなどして収益化に繋げている。

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TポイントもPontaも個人情報はわからないように注意しながら、その購買データをマーケティングデータとして広告会社に売り込んでいる。

広告会社にとって、コミュニケーションプランニングやメディアプランニングを行う上で、購買データをもとにプランニングする機会が増えている。

いわゆるBIツール・データを用いたプランニング、BIプランニングだ。

 

購買データでいうと、インテージのSCIやマクロミルのQPRもあるが、これらのデータは生鮮食品の購買データは取得出来ないし、TポイントやPontaが取得出来るような、ガソリンスタンドでの利用や家電量販店での購買データなどは取得出来ない。

ただ、こういったポイントプログラムサービスも欠点がある。

 

それは、ポイントプログラムサービスの提携企業以外のデータが取れないことにある。

顧客は、家の近くのファミリーマートで缶コーヒーを購入するし、会社の近くのローソンでも購入する。帰宅途中のセブンイレブンでも、次の日の朝食用に缶コーヒーを購入することもあり得る。

そうなると、顧客分析を行う上で、その顧客が該当ブランドの珈琲のヘビーユーザーか、ライトユーザーかという視点が持てなくなる。

ファミリーマートでは、缶コーヒーをあまり購入しないと判断されてしまうが、実際は、他コンビニを跨ぎながら一日3-4本も飲むヘビーユーザーだったりもする。

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ライト層をミドル層に引き上げ、ヘビー層の購入本数を+1本増やす、という設計が正確にはできないのだ。

Tポイントのみ、Pontaのみで分析すると、このあたりの購入量層という概念を用いた分析ができないという弱みもある。

 

今回、Rポイントカードの提供が開始され、データが蓄積されて行くことで、数年後に、楽天もこういった購買データを広告会社に販売していく可能性がある。

楽天の強みは、何よりネット企業のため、ネットでの顧客のデータを既に大量に保有している。

ネット→リアルと会員データを繋いで行くことで、ネット上で精緻なターゲティング可能なデータ(在庫)が増える。

Yahoo!が提供するような、行動「予測」ターゲティングというのも高い精度で実現可能になるだろう。

一方の、TポイントやPontaはリアル店舗から開始して、ネット会員データと繋いでいる(リアル→ネット)が、楽天のネット→リアルの方がスムーズに会員データの繋ぎ込みができるのではないか。

リアルのポイントカードをネットでも登録するのは、ユーザーからすると若干ハードルが高いように感じる。

 

広告会社という視点で、これらポイントカード業界がもつ有益なデータを如何に活用するか、となると2つある。

1つは、現在行っているように、各ポイントカード企業が持つデータを元に分析を行い、業種を跨いだキャンペーンを行っていくことだ。

例えば、Pontaのデータを分析すると、日産レンタカー利用者はファミマのPB商品購入のポテンシャルがある、ということがわかれば、ファミマと日産レンタカーといった、今まで考えられない業種を跨いだキャンペーンを実施することも可能になる。

Pontaのポイントを3倍配布というインセンティブを元にキャンペーンの成功を後押しすることも考えられるだろう。

もう1つは、これらポイントプログラムを提供する企業をさらに上位で繋ぐことだ。

異なるコンビニで購入したデータ、また飲食店や旅行会社データを使って、壮大なカスタマージャーニーを描き、そこからキャンペーンの設計を行う。

ポイントプログラムを提供する企業同士で手を取り合い、データを連携させるということは現実的ではないが、特定の(例えば大手外資など)企業のみでテスト的に実施できる日がもしかしたらくるかもしれない。(この方向性は希望的観測が強いが)

妄想は色々膨らむが、ポイント業界が2強から3強に増えたことで、今後この業界の動きが見逃せない。

まずは、Rポイントカードがどこまで会員を伸ばせるかが見物だ。

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Profile

 

千田 智治
Tomoharu Senda

 

広告会社 勤務
ストプラ・デジタル

 

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